暴力団(ぼうりょくだん)は、組織された
暴力を背景に金品の利益などの私的な目的を達成しようと、
日本を中心に活動する反
社会的な集団。暴力団自身は
任侠団体(にんきょうだんたい。
仁侠団体とも書く)などと自称している。生き残りのため系列に思想団体(
右翼団体)や合法的に見せた会社(
企業舎弟)を持つことが少なくない。
「暴力団」という呼称は、
警察や
マスコミが
戦後に
命名したものであるが、現在では法的にも正式なものとなっている。
概要
創設者の
姓名や拠点とする地名などに「組」、「会」、「一家」、「連合」、「興業」、「総業」、「商事」などを添えた団体名を名乗る場合が多い。 社会に対しては企業や右翼団体、また近年では
NPO法人を装うこともある。 「シノギ(凌ぎ)」と呼ばれる資金獲得行為には、いわゆる「みかじめ料」・「用心棒料」徴収などの
恐喝行為、売春の斡旋、
覚醒剤や
麻薬などの薬物取り引き、
賭博開帳、
闇金融などの非合法な経済活動を行っていることが多い。
刺青、
指詰めなどの特殊な文化を持つ。 構成員は「
ヤクザ」、「極道」、「
不良」、「
チンピラ」などと呼ばれる。ヤクザの語源は多説あるが、カルタ賭博で一番悪い目である「八」「九」「三」の数(いわゆるブタ)から由来するという説、
喧嘩などの仲裁を行った「役座」という社会的地位に由来するという説などがある。数字の「893」は「ヤクザ」の直接的表現を避ける場合に使われる。「極道」は自らを美称する呼び名で、“男の道を極めし者”から来ている。また極道は「極道楽」の略ともされ「道楽を極める遊び人」との意味もある。
「顔」「面子」を潰されることを最も嫌い、組織内での制裁も
指詰めから
除名、
破門、
絶縁に至るまで、多岐に渡る。
歴史と区分
江戸時代の
町火消しから始まったという説がある。
祭礼の周辺で商業活動を営む者を
的屋(てきや)または
香具師(やし)と呼び、
丁半などの
博打を生業とする者を
博徒(ばくと)と呼ぶ。江戸時代においては、これらの者達は一般社会の外の賤民(せんみん)的身分とされていた。現代の一般社会からは、的屋も博徒も同じ「暴力団」と見なされているのが現状である。現代のヤクザは的屋の系譜を継ぐ者、博徒の系譜を継ぐ者、両方が存在する。
これら伝統的な団体の他、
第二次世界大戦後の混乱の中で形成された
愚連隊(ぐれんたい)などの不良集団からも暴力団は誕生した。 その後、日本の急速な経済復興に伴い
港湾荷役、
芸能興行など合法的な経済活動にのみ従事する「
企業舎弟(
フロント企業)」も生まれた。
暴力団と差別問題
アメリカ合衆国の
マフィアにイタリア系や中国系の
マイノリティが多いのと同様に、日本における暴力団の巨大化も、特定の社会集団に対する差別が原因の一つだという説がある。この説は、メディアにおいてタブー化され、報道で伝えられることはないが、幾つかの書籍などにこれに関する情報が記載されている。
-
猪野健治は、『やくざと日本人』の中で、昭和中期の関西や北九州の部落の悲惨な現状を取り上げ、日本社会に「やくざとなるか土方になるか」しか、選択肢の無い若者が多く存在する事がやくざの温床であるという見解を示した。
- アメリカのジャーナリスト、カプランとデュブロ著の、『ヤクザニッポン的犯罪地下帝国と右翼』第三書館(原書名は『Yakuza:The Explosive Account of Japan's Criminal Underworld』)には、「日本の最大広域暴力団・山口組の構成員2万5千人のうち約70%の者が部落出身者であり、約10%の者が韓国人等の外国人」という記述がある。ただし、原書のみ。邦訳版では削除。
-
慶應義塾大学の加藤久雄教授は、自身の論文の中で上記のカプランとデュブロのデータを引用した。
-
会津小鉄の会長だった高山登久太郎は講演で、「ウチの組は同和が3割、在日が3割」だった」と発言したことがある。(彼の組は、会長が在日だったため、在日の割合が高かったと見られる。)
-
宮崎学は、大谷昭宏との共著、『グリコ・森永事件 最重要参考人M』で、「関西に暴力団が10人おったらそのうち9人はマイノリティ」と発言している。
- 元公安調査庁調査第二部長の菅沼光弘は、2006年10月19日に行われた東京・外国特派員協会における講演で、山口組のナンバー2である高山清司から聞いた話として、暴力団の出自の内訳は部落(同和)60%、在日韓国・朝鮮人30%、一般の日本人など10%であるという見解を示した。
マイノリティが暴力団員となるのは、差別により経済的な理由で学校に通えなかったり、就職差別で一般的な職に付くことができなかったりしたため、というケースが多い。しかし、暴力団員が多い、という理由でそのマイノリティが差別されることも多く、差別の悪循環につながっている。
組織
日本のヤクザは通常、親分(組長)に対して弟分と子分が絶対的に服従する
家父長制を模した序列的・擬制的血縁関係を構築することを特徴とし、この関係によって暴力団の強固な結合を確実なものにする。一般に、代表者である組長(会長、総長、総裁などとも)と構成員である組員とは、盃事と呼ばれる儀式を経ることによって強い絆で結ばれる。組員は、組長から見て弟分(舎弟)と
子分(若中、若衆など)の2つに大別される。1次団体の組員も、自らを組長とする2次団体を組織する。 2次団体の組員もまた、自らを組長とする3次団体を組織する。これを繰り返すことによって暴力団は
ピラミッド型の
階層構造を形成する。日本最大の勢力を誇る
山口組の場合には、5次団体までの存在が確認されている。 各階層の団体において、当該組長と盃を交わした組員を特に直参と言う。直参より下の下部団体組員について、暴力団側は“上部団体とは関係のない者”と主張しているが、外部社会からは“上部団体の統制下にあり、上部団体組長の指揮監督下にある者”と見られており、損害賠償請求訴訟でも上部団体組長の
使用者責任を認める
判決が出されてきた。
組長が引退したり
死亡した場合には、組員の中から新たな組長が決められる。個々の組織の状況にもよるが、
長男に当たる第一の子分(
若頭、若中頭、若者頭、理事長など)が選ばれる場合が多い。新たな組長が就任すると、他の組員との間で盃直しと呼ばれる儀式が行われ、新たな序列に基づく擬制的血縁関係が再構築される。先代組長が跡目を指名しなかった場合には、組員同士の話し合いや入れ札(
投票)で決められる。跡目選定を巡る内部対立から組織分裂に到った例としては、山口組からの
一和会の分裂が挙げられる。ただ、近年は警察の監視が厳しく、武力による跡目争いを行うと警察が介入し、組織解体につながるため、武力抗争は減っている。
暴力団は組員から、一定額の会費を集め運営経費に充てる。また、義理掛けなどの慶弔費も これとは別に徴収する。また各組織ごとに舎弟企業や顧問先などをもち、そこで得られた利益は上納金として上部組織に納められるようになっている。
麻薬や
覚醒剤の密売、
闇金融、
振り込め詐欺など犯罪行為は下部団体の組員などが個人的に行っているという建前をとっている。上部団体は舎弟企業などを介し表面上合法的に収益を上げるシステムになっている。
このような暴力団の不法行為に対し「
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(平成3年法律第77号、暴対法)が
1992年3月に施行された。
指定暴力団
指定が取り消されたか失効した団体
- 石川一家(佐賀県) - 五代目山口組傘下入り(宅見組加入)により1995年10月16日 取り消し
- 二代目大日本平和会(兵庫県) - 再度の指定が行われず1997年4月6日 失効
- 三代目山野会(熊本県) - 壊滅により2001年11月8日 取り消し
-
極東桜井總家連合会(静岡県) - 消滅により2005年5月31日 取り消し
-
國粹会(東京都) - 六代目山口組加入により2005年10月31日 取り消し
-
中野会(大阪府) - 解散により2005年12月22日 取り消し
主な非指定団体
関連項目
外部リンク
*