概要
法令という語は、一般には法律(国会が制定する法規範)と命令(国の行政機関が制定する法規範)を合わせて呼ぶ法用語である。しかし、もろもろの法規では、法律と命令のほか、条例や規則(地方公共団体が制定する法規範)、最高裁判所規則(最高裁判所が制定する法規範)、訓令(上級官庁が下級官庁に対して発する命令)などを含めて「法令」と呼ぶこともある。このように、「法令」という用語の使い方は、かなりまちまちである。結局、個々の用例に則して、その範囲を決めるほかはない。
日本の法令の数
- 憲法 1
- 法律 1791
- 政令 1836
- 府省令 3238
- その他(勅令、閣令、太政官布告) 92
法令の種類
日本の法令には、種類ごとに優劣関係がある。上位の法令が優先され、上位の法令に反する下位の法令は効力を持たない。優劣関係は、おおむね次のようになっている。
国の法令 > 条例 > 規則(
教育委員会規則、
公安委員会規則など)'''
- ただし、法令の対象となる事項にもよるが、憲法と条約との関係、条約と法律との関係、法律と最高裁判所規則との関係については、優先関係につき争いがある。
現行法令
日本の現行法令には、
憲法(
日本国憲法)、
条約(憲章、協定、議定書などを含む。)のほか、
法律、
政令、
命令(府令、省令、各省庁等が定める規則、庁令)、
最高裁判所規則、
議院規則(衆議院規則、参議院規則)、ならびに
条例、各地方公共団体の首長や行政委員会が定める
規則がある。それぞれの内容は下記の通り。
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憲法
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国家の基本秩序を定める根本規範である。統治体制、権利義務などを定めている。
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条約
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国際法上で国家どうし、あるいは国際連合などの国際機関で結ばれる成文法である。日本国が同意しているものは、公布され、国内では法律より優先する。条約は憲章、協定、議定書などの名称で締結されるが、法的には条約と扱われる。
- 憲法 - Constitution
- 法律 - Act(原則)、Code(いわゆる法典)
- 政令 - Cabinet Order
- 内閣府令 - Cabinet Office Ordinance
- 省令 - Ordinance of the Ministry
- 規則 - Rule
- 条例 - Prefectural Ordinance(都道府県条例)、Municipal Ordinance(市町村条例)
現行法上新たに制定されない法形式
現行法上新たに制定されない形式の法規範は、下記の通り。現行法上は新たに制定されない法形式であっても、現行法に根拠を持つ法規範は、効力を有する。
法律・政令・命令に準じる法形式
-
太政官布告・太政官達
- 1868年に政体書によって設置され、内閣制度が創設されるまで存続していた最高官庁である太政官が制定していた法形式である。一般国民を拘束する内容を持つものを太政官布告とし、官庁限りの心得を太政官達としていたが、必ずしもその区別が守られていたとはいえなかった。太政官制度が廃止された後も、後に制定された法令に矛盾しない限りその効力を有し、日本国憲法施行後も大日本帝国憲法下で法律又は勅令としての効力を認められたものは、現憲法に違反しない限り効力を存続するとされている。太政官布告第何号というのは制定順序ではなく後日編纂された太政官日誌の登載順である。
- 緊急勅令
-
大日本帝国憲法第8条に定められていた法形式で、公共の安全を保持しまたはその災厄を避けるため緊急の必要により帝国議会が閉会の場合において、法律に代わるものとして天皇が発布していた勅令である。帝国議会の次の会期に提出しなければならず、もし議会の承認が得られなかったときは、政府は将来に向けてその効力を失うことを公布しなければならなかった。なお、「緊急勅令」という呼称は講学上のもので、法令上の正式な呼称及び法令番号での表記は単に「勅令」であった。次項の(普通の)勅令との区別は、官報公布時の上諭(公布文)に緊急の勅令である旨の記載があるかないかによってなされた。
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勅令
- 大日本帝国憲法第9条に定められていた法形式で、法律を執行するためまたは公共の安寧秩序を保持しおよび国民の幸福を増進するために天皇が制定していた法形式である。憲法上法律事項とされていない事項を対象とする場合は、法律に基づかなくても制定は可能であった。法律事項以外でも、軍に関することは軍令で、皇室に関することは皇室令で定めていたので、これらを除いたものが勅令事項とされていた。制定にあたっては内閣が輔弼(事実上の承認を)していたので、現在では「政令」とみなされ、位階令など、一部には現在でも効力を有しているものがある。現在、勅令の廃止や改正は(法律の効力を持つ「ポツダム勅令」を除いて)政令により行われている。
- 閣令
- 内閣官制(明治22年勅令第135号)第4条に定められていた法形式で、内閣総理大臣が制定していた。現代の内閣府令に相当するものといわれている。
皇室・軍隊において制定された法形式
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皇室典範
- 現在の皇室典範は国会が制定する法律であるが、大日本帝国憲法時代は、帝国議会の議決を経ずに制定され、憲法と対等の効力を有するものとされた。皇室典範の改正又は増補は、皇族会議及び枢密顧問の諮詢を経て勅定されるという手続きで行われていた(典範62条)。また、日本国憲法施行に伴い皇室典範という法形式そのものを消滅させるために制定された皇室典範及皇室典範増補廃止ノ件(昭和22年5月1日公布)は、この改正手続きに準じて制定されたものである。
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皇室令
- 旧皇室典範に基づく諸規則、宮内官制及びその他の皇室の事務に関して勅定を経た規定であり、発表すべきものは、この法形式により制定された。皇族に準じた礼遇を受けていた王公族や、貴族である華族・朝鮮貴族の権利・義務などについてもこの法形式で規律していた。日本国憲法施行に伴いこの法形式が廃止されることとなり、昭和22年皇室令第12号によって全ての皇室令が廃止されている。この法形式では、上諭に必ず宮内大臣が副署することとされていた。ただ、国務大臣の職務に関連する皇室令については、宮内大臣の後に、内閣総理大臣及び主任の国務大臣が副署することとされていた。
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軍令
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天皇の陸海軍統帥権に関して勅定を経た規定のことをいう。1907年の「軍令ニ関スル件」(明治40年軍令第1号)制定に始まり、陸海軍解体後の1946年に廃止された。軍令で公布を要するものは、上諭を付し、主任の陸軍大臣、海軍大臣が副署することとされていた。なお、内閣総理大臣の副署はされなかった。
地方首長が制定した法形式
- 都令 北海道庁令 府県令 州令 道令
- 条例で定めるもの以外の事項について、都長官、北海道庁長官、府県知事、州知事、道知事が制定した命令である。
外地において制定された法形式
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律令
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台湾が日本の領土であった時代に定められた法形式である。内地において法律で定めるべき事項について天皇の勅裁を経て台湾総督が制定していた。総督はその管轄地域においては軍事・行政・立法の全権を掌握しており、通常の手続では台湾総督府評議会の議決を経て勅裁を得て発行したが、緊急時には事後の勅裁を許されていた。
- 制令
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朝鮮が日本の領土であった時代に定められた法形式である。内地において法律で定めるべき事項について天皇の勅裁を経て朝鮮総督が制定していた。
- 総督府令
- 朝鮮および台湾において総督が法律で定めるべき事項以外について定める命令である。
- 州令
- 台湾における内地では府県令に相当する命令で、台湾の地方単位「州」の長たる州知事が定めるものをいう。罰則は府県令より重く省令と同じで、朝鮮の道令よりは軽い。
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庁令
- 台湾における内地では府県令に相当する命令で、台湾の地方単位「州」を置かない未開地域「庁」の長たる庁長が定めるものをいう。罰則は府県令より軽い。
- 関東庁令
- 関東長官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。(昭和9年まで)
- 関東局令
- 関東局の長たる満洲国駐箚特命全権大使=関東軍司令官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。(昭和9年から)
- 民政署令
- 関東州における内地では府県令に相当する命令である。関東州の地方単位「区」(昭和12年からは「市」は「区」に含まれない)に置かれた民政署の長たる民政署長が定めるものをいう。罰則は府県令と同じ。である。
- 南洋庁令
- 南洋庁長官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。
- 樺太庁令
- 樺太庁長官が定める命令である。罰則は省令と同じ。
アメリカ施政権下の沖縄の法令
- 布告
-
米国民政府により定められた法形式である。主に占領に関する基本原則などを定めていた。
- 布令
- 米国民政府により定められた法形式である。上記の布告をさらに具体的にした法令である。
- 立法
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琉球政府
立法院により定められた法形式である。布告・布令の範囲内ではあるが、日本本土において法律で定めるべき事項について米国民政府の承認を経て制定していた。
組織改編の際に便宜上定められた法形式
- 中央省庁等改革推進本部令
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中央省庁等改革基本法第53条第2項の規定に基づき、中央省庁等改革推進本部が内閣府又は新たな省の組織に関する事項で内閣府令又は省令で定めるべきものについて、当該機関の命令として中央省庁等改革推進本部令を2000年8月14日及び12月22日に114件を発した。中央省庁再編の実施日である2001年1月6日に、内閣府令及び省令としての効力を有することとされた。
法令ではないが参照されるもの
次のものは法令ではないが、しばしば法令の
解釈の参考にされる。
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国会決議(衆議院決議、参議院決議)
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国会または議院(衆議院、参議院)の意思決定。法律案を通した場合に「○年後に見直しする」といった附帯決議が行われることがある。
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閣議決定、閣議了解、閣議報告
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内閣の意思決定である。
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予算
- 法令ではないが、法令としての性格もあわせ持っている。
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規格
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日本工業規格、日本農林規格など。
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告示
- 公の機関が、指定・決定に基づいてその機関の所掌事務について、一般に知らせる事項である。官報に登載される。ただし文部科学省告示の学習指導要領は法令に準ずる拘束力があるといわれる。
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訓令
- 行政機関およびその職員を対象として定められる命令である。各省大臣、各委員会及び各庁の長官が、その機関の所掌事務について命令するため、所管の諸機関及び職員に対し発するものである。公共性が強く官報に掲載されるもの(俗に「大臣訓令」という。)と、行政機関の中堅幹部以下の役職配置を定めるなどの非公表扱いのものがある。
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通達
- 上級機関が下級機関に対して、その機関の所掌事務について示達するため発翰する公文書のこと。法令の解釈等を示すものとして、当該法令を所管する省庁が下級機関に対して発翰することが多い。ただし、あくまで行政機関内部の文書であることから、通達で示された法令の解釈は司法の判断を拘束しない。
- 行政実例
- 法令の適用にあたって、その法令を所管する機関が示す解釈のこと。下級機関からの照会に対する回答というかたちで示されることが多い。文書記号・文書番号(発翰番号)及び発翰年月日を付した上で、官職名でもって照会者に対し回答がなされる(例:A県B部長あてZ省Y局X課長回答)。その内容は当該機関が組織として示す公的な見解とされ、しばしばいわゆる有権解釈として取り扱われる。通達と同じく、そこで示される解釈は司法の判断を拘束する力を一切持たないものであるが、指揮監督という関係に基づき、当該事案及び事後の同種事案において下級機関の判断を事実上強く拘束する。また、インターネットによる行政機関のサイトにおいて所管法令等の解釈がされることがある。
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内簡
- 法令で抽象的に示された規定についてそれを具体的に認定する際の一定の基準や、仔細にわたるため法令で規定するになじまない事項などを参考として地方自治体などに示したもの。法的な拘束力は一切ないが、地方自治体の判断に対して実質的な影響力があり、これを誘導する目的で発出されることも多い。
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協定
- 当事者間の取るべき処置について取り決めた合意の総称である。覚書・念書・協議書等が該当する。
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規程
- 行政組織の執務に関する内部規則で条文形式で定めている。
- 要綱
- 行政の執行の指針を定めた内部規程である。組織要綱、助成要綱、指導要綱等がある。
- 行政機関著作物
- 「学習指導要領解説」・文部科学省著作教科書等によって学習指導要領よりも詳細な教育内容が示される。このほか官報や法令全書で正式に公示されない通達はこのような著作物に収録されることよって初めてその存在や内容が確認できることがある。中には「公用文作成の要領」のように(旧)文部省や文化庁名義の著作物に収録された「読み替え版」が一般に通用しているというものもある。
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日本放送協会放送受信規約
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約款は法令ではないが、放送法によりテレビ設置者はNHKとの受信契約締結義務規定があるため、その契約条項である規約は法令に準する性格を持つこになる。
- 国公立学校学則
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会計基準
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企業会計原則、原価計算基準など。旧大蔵省の企業会計審議会(より古くは企業会計制度対策調査会)、2001年以降は財団法人財務会計基準機構内の企業会計基準委員会により定められる。公認会計士らに対する強制力はあるとされるものの、法令ではなく、法令のような一般的な強制力はないが、商法・会社法・金融商品取引法などの会計制度に関係する法令を制定・改正するに当たっての指針とされることもあるなど法令より上位に位置付けられることもある。
個別の記事を持つ日本国の法令
次の項目を参照のこと。
関連項目
脚注
*
ほうれい
出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)