首(
くび 「頸」の表記も)または
頸部(
けいぶ)とは、
人体において
頭(
頭部)と
胴体をつなぐ部位である。また「くび」の語は、この「
首」及びそれより上部にある頭部全体を指す。頭部との区別での「くび」を表わす場合、「くび」の
漢字表記で「頸」を用いる。
ヒトの首の解剖学
ヒトを含む
哺乳類の
脊柱の頸部は7つの
堆骨で構成される。これらを
頸椎という。頸椎は、典型的に C-1 (CI) から C-7 (CVII) で参照され、各々の堆体の間には盤状の軟骨性の
椎間板がある。首は頭の重量を支え、脳から下って体に至る神経束を保護する。さらに、首は高度に柔軟であり、頭部を回し、あらゆる向きに曲げることができる。脊柱は、頂上から底部まで、前方に向かって凸なかたちでゆるやかに(S字状に)湾曲する。その湾曲は脊柱のあらゆる曲線のなかでもっとも目立たないものである。
柔性組織の解剖学
顎の下の正中線上に舌骨体、その直下には「
のどぼとけ」と呼ばれる女性よりも男性で顕著な甲状軟骨の突起を感じることができる。さらに下には容易に輪状軟骨を、それと頸切痕のあいだには
気管と甲状腺峡部が形作られていることを感じとれるだろう。
胸骨甲状筋の外縁部はもっとも目立つ特徴である。それは
前頸三角と
後頸三角を分割する。前者の上部は
顎下腺を含み、
顎下腺は顎にある後者本体の半分の真下に横たわる。総頸動脈および
外頸動脈は胸鎖関節から下顎角へ向かって伸びる。
第XI脳神経あるいは脊髄副神経が描くラインは、下顎角と
乳様突起の中点から
胸骨甲状筋後縁の中央まで、そしてそれゆえ
後頸三角を横断して
僧帽筋の深層面に至る。外頸静脈はふつうに皮膚を透して見ることができる。それは顎の隅から
鎖骨の中央へと引かれる一本の線の上を走る。その近くにはいくつかの小さな
リンパ腺がある。前頸静脈は、より小さく、首の正中線から1センチ半ほど下に走る。
鎖骨は首の下限を成し、首から肩への横方向の外見上の勾配は
僧帽筋に起因する。
脊椎動物における位置づけ
首は頭部と肩の間の脊椎骨の範囲を指す。これを
魚類で見ると、この部位は鰓蓋に覆われた部位である。魚類ではこの部分は特に細くはなく、その可動性も限定的である。つまり
両生類の段階で鰓が失われたことで首が生じ、その部分の可動性が大きくなっている。ただし
両生類では首を縦に振ることしかできない。爬虫類ではこの可動性はより大きくなり、
恐竜では
雷竜、化石爬虫類では
首長竜のような多数の頸骨を持つ細長い首を持つ例もある。
鳥類はすべて長い首を持つ。これはこの類では胴体がコンパクトにまとめられ、脊椎骨などに互いに癒合があり、可動性が少ないことを補うものと考えられ、逆説的に飛行への適応と考えられる。つまり飛行運動のために胴体がまとまった一体であることを求められることから、それによる前足と後ろ足の運動性が犠牲になることから、これを補うために頭が様々な方向へ動ける必要があり、それが首を長くする方向の
進化を促したと見られる。
なお、首長竜などでは頚骨が多数であったから首はよく曲がったと考えられているが、哺乳類であるキリンでは頚骨は他の哺乳類と同じ7つであり、首はくねるようには曲がらない。
無脊椎動物の場合
上記のような定義からすれば、首は無脊椎動物には存在しない。しかし、実際には頭部と胴部とつなぐ部分は比喩的に首と呼ばれる例がある。また、この部分は頭部の運動性を決めるため、特にくびれていたり細長くなっている例があり、それぞれの動物の特徴となる。そのため、首をその名に持つ例があり、以下のようなものがある。
- 昆虫:クビナガムシ・クビボソゴミムシ・ツルクビオトシブミ
- 甲殻類:ナガクビムシ
首の可動性
首は頭を自由な方向に動かせるために大きな可動範囲を持つが、たとえばヒトは真後ろを向くことはできない。しかしたとえばフクロウ類はその可動性がさらに広くて、顔面を真後ろに向けることも、顔を上下さかさまに近い位置に曲げることもできる。
このような動きは、それができれば楽なことが多いから、日常的に無理に首を曲げようとして苦心することが多い。逆に、それが可能になったのを見ることは、それが異常なことであるのがわかりやすいために恐怖や嫌悪を感じさせる。映画『
エクソシスト』では
悪魔憑きの少女の首が真後ろを向き、日本では
妖怪にろくろ首がある。なお、哺乳類の頚骨の数では、首はくねれないから、ろくろ首は実在すれば哺乳類とはみなしがたい。
比喩的な例
先端に重要な役割があり、その基部が細くなって先端部の可動性を確保している場合、その細くなった部分に首という名を付ける例がある。以下のようなものがある。
また先端に頭の名を持つ場合、その根本が首である。
育児における首
- 首がすわる
-
育児の用語。幼児が頭を自力で持ち上げられる様になることをさす。
- 首上げ
- 首上げとは、あごを上のほうへ上げることである。首上げというが、実際には首ではなくあごを上げている。主に首のすわり始めた幼児が行う行為である。
首と通念
日本語の「くび」は、元々頸部を指す語ではあるのだが、戦闘行為や
処刑に際する
馘首(かくしゅ)・
斬首の慣習から頸部を断って胴から切断された
頭部を、さらには胴と離れているか否かを問わず、頭部そのもの指す語としても転用されるようになった。頭部の意味の「くび」は古い表現に残っている。
首という言葉は、
首をたてに振る(肯定すること)などでも使われる。なお、首を縦に振ると「はい」、横に振ると「いいえ」を表す。これは世界的に共通性が高いが、
インドや
ブルガリアは異なる。
首と個体性
首が命とつながって考えられる理由は、
個体の
命を
頭が握っているためである。個体の生命はそれを構成する細胞の生命に基づくが、高等な動物ではそれを統括する役割を
神経系と内分泌系、およびその役割の中枢としての
脳が果たしている面が大きい。しかし、実際にその体を養っているのは消化系や循環系などであり、それはほぼ胴体が担っている。そのため、頭部を胴部と切り離せば個体の生命は維持できない。つまり、それらをつなぐ部分である首を切り離すことは、確実に個体の生命を失わせる行為である。
もちろん脳をたたきつぶしてもよいのであるが、硬い頭蓋骨に守られているため、有効な破壊を行うのは簡単ではない。したがって、その個体を殺すためには頭をつぶすより、首を切ることが簡単かつ有効になる。
弱点としての首
上記のように機微は胴体と頭をつなぐ細くなった部分である。頭部からは
が、また胴体からは
が、狭くなった部分に含まれる。したがって、首は強度的には他の部分より劣った弱点である。例えば首の周りを締め付けることは、呼吸を止めたり血行を止めたりすることでたやすく相手を制圧することができる。このためにひもを首に巻くような首を絞めるというのは、きわめて有効な手段であるが、あまりにも致命的であるために
格闘技においては禁じ手である場合が多い。また、自殺する場合にもこれは有効であり、自らの体重が首にかかるよう、輪の中に首を入れ、ひもでぶら下がることで自らの首を絞めて自殺することを
首吊り自殺という。格闘技などにおいては首の強化は重要なものである。柔道の
絞め技は、血行を止めることで相手を昏倒させることを目的とする。
より確実に殺す方法としては首を切り落とすのがきわめて有効である。「首を切る」は「命を奪う」とほぼ同意義と扱われる。世界各地でも
死刑の方法として首を切る例は多い。
ギロチンはそのための専用機器である。日本の
武士の伝統的自殺法である
切腹も、実際には
介錯と称して首を切る介添え役がついて、実質的にはこちらが有効だった。腹を切る振りだけで介錯のみが行われた事例も多いという。
日本の通念
首を切断されれば人は生きていくことができない。これが転じて「首が飛ぶ」(職を辞めさせられる事)のように社会的地位が危うくなっている時などに使うこともある。
「首」を使った慣用句
- 首が繫がる
- 首を斬られる事を免れる。転じて、免職・解雇を免れること。
- 首がまわらない
-
借金が返せず、どうにもやりくりがつかないこと。
- 首になる
-
打ち首になること。解雇されたり免職されること。
- 首に縄を付ける
- 嫌がるものを無理に連れて行こうとする事。
- 首をかしげる
- 不思議・疑わしいなどの思いで首を傾ける事。
- 首を切る
-
罪人を斬罪に処したり、解雇・免職する事。
- 首をすくめる
- 首を一瞬縮める。恐れ入ったり困ったりした事を表すおどけたしぐさ。
- 首を突っ込む
- # その事に関係する。仲間に加わること。
- # 深入りをすること。
- 首を長くする
- 物事が早く実現する事を待ち焦がれる事のたとえ。
- 首をひねる
- どうすればよいかと考え込むこと。また、納得できずに考える事。
関連項目