市民ラジオ(英語:Citizens' Band、略称:
CB)は、 個人が比較的簡素に使用できる短距離通信用
無線。多くの国で27MHz帯で運用してている。
日本では26.9〜27.2MHzまでの
周波数の
電波を使用し、かつ
空中線電力が0.5
W以下である
無線局のうち、郵政省令(現総務省令)で定めるもので、
技術基準適合証明を受けた無線設備を使用する無線局で、
市民ラジオの無線局(電波法施行規則第6条第3項)という。英語での略称「CB」や
市民バンドとも呼ばれる。
元々は
アメリカ合衆国で
1960年代に登場し、アメリカにおいては5〜10Wの出力が許されている。
1970年代に
大型トラックの運転手を中心にブームとなった。現在でもアメリカでは大型トラックの運転手が広く使用しており、地域によってはドライバー達からの緊急通報に備えて
警察や
保安官が傍受態勢をとり、直接通報するチャンネルが指定されている地域もある。地方のハイウェイになると沿道には公衆電話さえ無いアメリカならではの用法である。
各国の市民ラジオ
オーストラリアの市民ラジオ
オーストラリアで市民ラジオが許可されるまで、27MHz帯は「ハンドフォン」に割り当てられていた。1970年代半ばまでに、愛好家がアメリカで販売されているCB用無線機を持ち込みアンダーグラウンドで使用していたが、当時はまだ
アマチュア無線に割り当てられた
周波数帯であった。CBクラブもいくつかでき、コールサインを交付しQSLカードも発行するなどし、CBの合法化へ働きかけていた。
1977年にCBは18チャンネルで合法化され、
1980年にはアメリカ方式の40チャンネルが採用された。合法化当初から、政府は免許制による有料のCBを導入しようとしていたが、数年後あきらめることになった。
1970〜80年代初頭の興隆の後、オーストラリアにおける27MHz帯のCB無線の利用は大きく落ち込んだ。その理由として、
FMや
リピーターなどを利用する477MHz帯
UHFのCB無線が導入されたことや、UHF帯の安価でコンパクトなトランシーバーの普及などが挙げられる。また、
携帯電話や
インターネットでの
チャットなど、新しい技術の普及で通信手段の多様化が大きな理由として考えられている。
日本の市民ラジオ
1970年代に
ソニー、
松下電器産業、
新日本電気、信和通信機などから発売された。携帯型で容積が1リットル程度の、当時としては比較的小型の無線機であった。道路などの工事現場、イベントやロケ現場、ゴルフ場などでの業務連絡用に利用される他、趣味として購入し使用する人がいた(10代の少年が中心)。1970〜
80年代は趣味利用者も多く、愛好者同士の交信も行われ、移動運用や
QSLカードの交換も行われていた。
運用に際し
無線従事者免許は不要である。無線機を入手後、電波監理局(当時)に無線局の開局申請をし、無線局免許状の交付(
呼出符号(コールサイン)の発給)を受けた後に運用が可能となる。しかし
1983年に市民ラジオの無線局免許の制度は廃止され、それ以降は無線従事者資格も無線局免許も不要な無線となっている。
使用する周波数は26.968MHz、26.976MHz、27.040MHz、27.080MHz、27.088MHz、27.112MHz、27.120MHz、27.144MHzの8つ。電波形式はAM(当時の表記でA3)のみ。概ね8kHz間隔であるが、等間隔でないのは途中の周波数が漁業無線・玩具の
トランシーバー・
ラジコンなど他の業務に割り当てられていたため。
無線設備規則の一部改正により、旧技術基準適合証明を受けた市民ラジオの無線局は、平成34年(
2022年)
11月30日が使用期限となった。新しい技術基準適合証明を受けた無線機があればこれ以後も市民ラジオを使用できるが、すでにCB用無線機を製造しているメーカーは無い。個人で技術基準適合証明を受けることも可能だが、平成17年4月1日現在の手数料は1台のみの場合36000円である。
ハイパワー市民ラジオ(違法CB)
日本における違法CB無線の沿革
1974年頃にアメリカのCB無線の規格が23チャンネルから40チャンネルに拡張され、旧規格の無線機は輸出・販売が出来なくなった。そのため、当時、日本の中小企業が多くを生産していた旧規格の無線機が、捨て値に近い値段で日本国内に流れた。それら無線機は日本の法律では合法的に使用することはできない(現在では電波を出せる状態で所持しているだけで違法)。これを上記の8ch合法CBのように改造して趣味として使う人がいた。下記の不法トラック無線が流行する以前は、正規免許の業務局に配慮しながら運用していたと言われている。またアマチュア無線家の中には、周波数帯の近い28MHz帯に改造して合法的に使用する人もいた。
しかしながら、上記のようにそのまま使用すると違法となる無線機が安価で流出したことから、主にトラック・ダンプカーなどの職業運転手が
アマチュア無線や業務無線の代わりに購入した。さらに混信に打ち勝ち通信距離を伸ばすため、送信出力を数10〜数100Wまで
増幅させるアンプを接続する者も現れ(1kWを超える送信電力の摘発例もあり)いわゆる
不法トラック無線の始まりともなった。
のちにはチャンネル数が拡張されるなど、アメリカの旧規格に合致しない無線機も出現、中には明らかに輸出用ではなく日本国内の違法CB専用として開発された機種も登場した。
アンテナも各種市販され、現在アマチュア無線用のアンテナを手がけているアンテナメーカーも参入していた。中にはごく近年まで「26〜29MHz用」と称し、アマチュア局用の28MHz帯用を装いながら27MHzでも使えるアンテナを販売していたメーカーもあった(これらの製品はアマチュアのモービル局で認められる上限の50Wをはるかに越える出力に対応しており、いかにも不自然な製品であった)。
ピーク期には違法CB専門の販売店まで登場し、ある種
アングラ産業化していたのが実態である。
違法CB無線機器
現在、下火となり不要になった違法CB無線機器の一部が
インターネットオークションに出品されており、当時の技術を知ることが出来る。製造された時期により構成が異なるが、比較的古いものは12.5V仕様の
トランジスタを使ったり、
テレビ用の
真空管を1〜8本程度使用して、出力は50〜1000W程度である。テレビのトランジスタ化以後はアメリカ製の傍熱管(通称セラミック)を使ったものもあった。28Vで動作するトランジスタが開発されてからは、これを2〜20個程度使用して出力は400〜2000W。公称5kWのものもある。電源は28Vで100A以上にもなるため、これに対応するために車の電装も強化する必要があった。
違法CB無線の性質と最盛期
27MHzの伝搬特性上、通常のコンディションでは高出力でもさほど長距離の交信は出来ない。
スポラディックE層など異常伝搬が発生すれば遠距離通信ができる場合もあるが、使用電波形式 (AM) 特有の混信が発生する。また自動車に搭載するために、使用できるアンテナの大きさには自ずと限界があり、短縮コイルを使用した効率が低く、打ち上げ角が高い(水平方向への輻射効率が低い、すなわち遠くへ飛ばない)ものしか使えない。まして局数が多かった時期は多くの局が過変調により非常に帯域の広がった電波を出していたため、独特な
ノイズが高いレベルで発生し、さらに通信距離を縮めていた。それでさらに出力を上げるという悪循環に陥っていたようである。それでも大半の違法CB無線運用者は「CBはアマチュア無線よりよく飛ぶ、27MHzはもっとも長距離に飛ぶ周波数」と信じていた。
一部の運転手はアマチュア無線の資格を取得して、正規にアマチュア無線局を開設した(CB上がりとも呼ばれた)が、大多数は無免許のまま無線機を大型トラック(ほとんどが
産廃や砂利・土砂処分のダンプトラック
過積載や
不法投棄取締りの情報交換、または単に仲間との会話を楽しむため)に搭載し、1980年代に不法トラック無線はピークに達したといわれる。正規の呼出符号を持たない彼らは、自らニックネームをつくり交信中に名乗っていた。中には自宅にアンテナを設置し固定局として運用する者や、団体(クラブと呼ぶ)を結成し定期的に会合を開き構成員の親睦を図る者もいた。クラブは特定の周波数(チャンネル)を占有することも多く、チャンネル争いで他のクラブと抗争事件を起こしたり、チャンネル使用料と称し金銭などを請求したりする者(
暴力団などの反社会勢力の資金源ともなっていた。
全英会を参照)もいた。
また、こうしたバンド内のノイズによる通信環境の悪化やチャンネル争いといったトラブルを逃れる目的で、一部のクラブが
山梨県のメーカーと「
NASAパーソナル無線」と称した37MHz帯のAM無線機を開発し使用していた。これは違法CB無線と同様に電波法に違反する。なお法に適合した900MHzのFMを使用する
パーソナル無線とは関係ない。
違法CB無線の社会問題化と取り締まり
1990年代以降は
自動車電話・携帯電話の普及や、取り締まり活動の強化などにより減少した。高出力の不法無線の影響は周辺のテレビ・
ラジオなどに受信障害を与え、オーディオなどのスピーカーへ会話の音声や雑音を混入させることも多い。自動ドアが誤作動したり、保管中の石油
ストーブが誤動作して着火し火災に至ったり、保管中のラジコン模型が誤動作して発熱・故障する、
パソコンが誤動作するなどのケースも報告されている。このような問題は違法CB無線機器が国内に出回り始めた1970年代からすでに発生していたが、証拠がつかみにくく、行政の取り締まり姿勢も消極的であったため、1990年代まで事実上放置されるに等しい状態だった。
kWクラスの大出力での送信を続ける(身体を強電磁界に暴露する)ことが原因で、違法局運用者の
脳腫瘍発症が多くなると言われる。不法無線以外にも
電磁波の人体に対する影響が問題視され、脳への影響を指摘する研究報告もあったことから、隠語で「脳ミソが沸く」と表現された。
ピーク時よりも減少したとはいえ、近年でも不法トラック無線が出没しており、依然として問題になっている。
関連項目
外部リンク