音楽(おんがく)とは、音のもつ様々な性質を利用して、それを時間の流れの中で組み合わせて、感情や思想を音で表現したものである。
従って音楽は3つの要件がある。
- 材料に音を用いる。
- 音の性質を利用して組み合わせる。
- 時間の流れの中で材料(音)を組み合わせる。
そのため、
リズム(
律動)、
メロディー(
旋律)、
ハーモニー(
和音)をもつものが音楽とされる。そして、このような特性をもつ音を様々な方法で発したり、聴いたり、想像したり、楽しむ行為のことをも指す。広くは人間が楽しめたり、意味を感じたりすることのできる音全体のことをさす場合もある。
概論
音楽の定義には、「音による芸術」といったものから「音による時間の表現」といったものまで、様々なものがある。( #定義 )
音楽の歴史は有史以前まで遡ることが出来る。( #歴史 )
音楽行為に関しては、現代では一般に「
作曲」「
演奏」「
鑑賞」の3方面が基本として考えられている。作曲とは、作曲者の心に感じた事を音によって表現することである。演奏(えんそう)とは、再現芸術ともよばれ、作曲された音楽を実際に音として表現する行為であり、原曲を変えて演奏したり(編曲)、声楽曲を器楽曲に変える等(編曲)する行為も演奏行為とされる。( #演奏 )。鑑賞とは音楽を聴いてそれを味わったり、価値を見極めたりすることである。
音楽には様式があり、それを「ジャンル」と呼んでいる。「民族音楽」「クラシック音楽」「ジャズ」「ロック」などといった名称で呼ばれているのがそれである( #ジャンル )。
近年では人々の音楽を聴く行為を統計的に見ると、再生音楽が聴かれている割合が多くなっている。( #生演奏 / 再生音楽 )
定義
広辞苑では「音による芸術」とされている。
美学においては、人為的な音楽は「音による時間の表現」、ともされる。
「規則性」という言葉が定義に入る場合もある。。
語源
『
呂氏春秋』(紀元前239年に完成)に既に「音楽」という表現がみられる。
-
音楽の由来するものは遠し、度量に於いて生じ、太一に於いて本づく (『呂氏春秋』大楽)
漢語で「楽(ガク)」の字は、「謔」(ふざける)や「嗷」(大胆にうそぶく)などと発音が似ているため、「楽しむ」という概念に当てられるようになった。
歴史
- 作曲家と演奏家
古き時代においては「音楽をつくる人」「演奏する人」といった区分は無く、人は音楽をつくり、かつ演奏していた。継承された曲を演奏するとしても、明確に「作曲家」「演奏家」などと区別する必要は無かった。
民謡は本来、作曲者不詳の自然発生的な音楽であった。
西洋音楽が宗教音楽から宮廷音楽と進むにつれ、支配者層の庇護のもと権威付けの意味から格付けが行なわれた。また、実際面では、楽器の進化と要求される演奏技術の高度化、多数の楽器の使用、音量を増すための多人数化などから分業化の必要があった。
近年になり
レコードの流通が進むと、
ポピュラー音楽では「販売枚数」という経済的指標が最優先になることにもなった。工業生産品となった音楽は、製作のための初期投資がかかるため、リスク回避のために作曲家と演奏家の分業化がすみやかに定着した。
ただ、ひとりひとりの音楽家の行為全体に着目してみると、やはり「
作曲家」「
演奏家」といった区分はあまり明確なものではなく、社会的認知または得意分野を目安に外部から与えられた便宜上の分類とも言えよう。
- 日本での音楽家の歴史
日本においては、
平安時代になると、音楽(
雅楽)の専門として芝、東儀、豊の三家が制定され、
世襲により現在まで続いている。また
鎌倉時代には
視覚障害者保護のため「
検校」の官位が生まれ、後に
当道座が整備されて、それに属する
盲人は専門家として平曲(平家
琵琶)、
江戸時代にはそれに加えて
三曲(
地歌三味線、
箏曲、
胡弓)の占有が認められた。これが盲人音楽家の地位を保証し、
近世邦楽の発展を支えることになる。その他、
室町時代から
能楽は武家の式楽として、能楽師たちは身分を保障されていた。江戸時代には
浄瑠璃など、専門家の権威付けとして、
芸道を管轄する役所「嵯峨御所」に届け出、認可されると
家元として一派を構えることができた。また演奏家の優劣を評する「
番付」がしばしば発行された。一派を立てるには、みずから作曲して独自性を示すことが求められるが、日本の音楽においても演奏家は作曲家を兼ねていた。
要素
- 音の要素
- 西洋音楽における三要素の概念
上記の要素に関連して、いわゆる
西洋音楽の世界では、一般に音楽は
リズム、
メロディー、
ハーモニーの三要素からなる、と考えられている。ただし、実際の楽曲では、それぞれが密接に結びついているので一つだけを明確に取り出せるわけではない。また、音楽であるために三要素が絶対必要という意味ではない。たとえば西洋音楽以外では
ハーモニーは存在しないか希薄である事が多いし、逆に一部の要素が
西洋音楽の常識ではありえないほど高度な進化を遂げた音楽も存在する。このように、これら三要素の考え方は決して完全とは言えないが、音楽を理解したり習得しようとする時に実際に用いられ効果をあげている。
- メロディ
メロディ(旋律)は特に
和音の構成によってなされており、和音は
周波数のおよそ整数比率によって発生する。
音楽行為
作曲
作曲とは、曲を作ること、あるいは音楽の次第を考案することである。具体的には、楽譜を作成してゆく、ということもあれば、
即興演奏という方法で、楽譜制作は抜いて、作曲をすると同時に演奏をしてゆく、ということもある。
演奏
演奏とは、実際に音を出すこと、つまり音楽をかなでることであり、
楽器を奏することだけでなく、広義には
歌を歌うことも含まれる。
演奏には
即興演奏もあれば、
譜面に従った演奏もある。なかでも、
ジャズでは
即興演奏が多用され、一方
クラシック音楽では通常は譜面の音符の通りに演奏されている。真に機械だけによる演奏は
自動演奏と呼ばれている。
鑑賞
鑑賞とは、演奏を視覚、聴覚等で楽しむことにより音楽的芸術を示すことである。
音楽評論家等がそれを行っていると考えて良いだろう。
ジャンル
音楽の「
ジャンル」とは音楽の様式や形式のことである。古来、音楽は多くの社会で
娯楽、
宗教、
儀式などを通じ、生活に密接したものになっており、多くの特徴ある形式や様式を生み出してきた。
音楽のジャンルは、現在聞くことの出来る音楽の様式・形式であると同時に、発生した源、歴史の手がかりとなっている。
かつてジャンルの変化というのは比較的ゆっくりしたものだったが、
レコード等が流通するようになってからは、音楽家が地域や時代を超えてすばやく色々なジャンルの音楽を学べるようになったことにより、ジャンルの融合等の試みも生まれ、ジャンルは加速度的に分化されていった。現代の音楽は、様々なジャンルの複雑な合成になっていることが多い。
ジャンルの例
楽器編成
楽器の編成は演奏する音楽のジャンルによってある程度左右される。例えば以下のようなものがある。
関連項目
生演奏 / 再生音楽
音楽は生演奏だけでなく、記録・再生された「レコード音楽」あるいは「再生音楽」を楽しむことができる。近年では人々の音楽を聴く行為を統計的に見ると、再生音楽が聴かれている時間・頻度が圧倒的に多くなっている。
録音技術
エジソンが発明した蝋菅録音機、レコードの普及につれて
録音技術は発達し、より優れた録音や便利になった記録媒体・再生機器によりさらなるレコードの普及を加速するという相乗効果を生んできた。
1960年代には、
録音機器や
シンセサイザーの普及がポピュラー音楽の製作手法を根本的に変えた。1990年代にはデジタルレコーディングが普及し、音楽の加工の技術的な可能性が広がった。
配布・配信
関連項目
音楽産業と大衆化
優れた音楽を作り演奏するのに、理論的裏づけを持つ高度な訓練や教育は必然ではない。民衆は厳格な伝統的価値観や枠組みにとらわれない新しい響きや歌詞を支持する。そうした需要に対し、レコード録音・販売・放送を行う企業が音楽コンテンツを供給し、これにより、商業ベースに乗った音楽が、地理的な隔絶を乗り越えて全世界に普及することとなった。いわゆる「
先進国」の音楽・音楽家は、その国に追随する国々で広く受容されることが多い。
音楽都市
音楽都市と言えば、一般に、音楽文化が特に豊かな都市、音楽が住民の日常生活にすっかり溶け込んでいる都市、あるいは音楽産業が非常に栄えている都市、などのことを指す。以下はその例である。
音楽と脳
音楽を、単なる「音」ではなく、また「言語」でもなく、「音楽」として認識する脳のメカニズムは、まだ詳しく分かっていない。それどころか、ヒトが周囲の雑多な音の中からどうやって声や音を分離して聞き分けているのかなど、聴覚認知の基本的なしくみすら未解明なことが多い。しかし、音楽と脳の関係について、以下のようないくつかの点は分かっている。
- 音楽に関係する脳:側頭葉を電気刺激すると音楽を体験するなどの報告から、一次聴覚野を含む側頭葉が関係していることは確かである。
- 音楽、とくにリズムと、身体を動かすことは関連している。
- 幼い頃から練習を始めた音楽家は、非音楽家とくらべて大脳の左右半球を結ぶ連絡路である「脳梁」の前部が大きい(Schlaugら、1995)。楽器の演奏に必要な両手の協調運動や、リズム・和音・情感・楽譜の視覚刺激などといった様々な情報を左右の皮質の各部位で処理し、密接に左右連絡しあうことが関係している可能性がある。
-
絶対音感:聴いた音の音階、基準になる音との比較なしに、努力せずに識別できる能力のことで、9〜12歳程度を超えると身に付ける事ができないといわれている。アジア系の人には絶対音感の持ち主が多いと言われているが、これが遺伝的、文化的要因のいずれによるのかははっきりしない。また、絶対音感を持っている人と持っていない人では、音高を判断しているときに血流が増加する脳の部位が異なる。持っていない人では、音高を短期記憶として覚えることに関係する右前頭前野の活性が弱いのに対し、持っている人では記憶との照合をする、背外側前頭前野の活性が強かったという。また絶対音感保持者では側頭葉の左右非対称(左>右)が強いという(Zattoreら、2003)。
- 音楽と数学の関係:中世ヨーロッパで一般教養として体系化された「自由七科」では、音楽は数学的な学問の一つとして数えられている。また、子供に音楽の練習をさせると数学の成績が伸びたという報告(Rauscherら、1997)もあり、音楽と数学の関連性を示唆する。
学術的な音楽の研究
参考文献・資料
- 近藤譲 『“音楽”という謎』春秋社 ISBN 4393934857
- 岩田誠 『脳と音楽』メディカルレビュー社 ISBN 4896003764
- 谷口高士 『音は心の中で音楽になる―音楽心理学への招待』北大路書房 ISBN 476282173X
- リタ アイエロ 編 大串健吾 訳『音楽の認知心理学』誠信書房 ISBN 4414302838
- Rauscher FH, Shaw GL, Levine LJ et al., ''Music training causes long-term enhancement of preschool children's spatial-temporal reasoning.'', Neurol Res. 2-8, 19, 1997.
- Schlaug G, Jancke L, Huang Y et al., Increased corpus callosum size in musicians., Neuropsychologia. 1047-1055, 33, 1995.
- Zattore R., Absolute pitch: a model for understanding the influence of genes and development on neural and cognitive function., Nature Neuroscience. 692-695, 6, 2003
脚注・出典
関連項目
外部リンク
*