原理上、
真空中でも推力を得ることができるため、主に
宇宙空間での移動手段として使われている。また、
ミサイルの動力として軍事的に利用される場合も多い。
狭義にはロケットエンジン自体をいうが、ロケットエンジンを搭載して
人工衛星などの
ペイロードを宇宙へ打ち上げる打ち上げ機(Launch Vehicle)全体をロケットということも多い。
なお、推力を得るために射出される質量(
推進剤、
プロペラント)が何か、それらを動かすエネルギーは何から得るかにより、ロケットは様々な方式に分類されるが、ここでは最も一般的に使われている
化学ロケット(
化学燃料ロケット)を中心に述べる。
ロケットの語源は1379年、イタリアの技術者であるMuratoriによって名づけられたRocchettaである。
概論
化学ロケットは、燃料の
燃焼(
化学反応)によって生じる
熱エネルギーを利用し、燃料自体を推進剤として噴射するもので、効率は最も悪いが利用しやすい。また、短時間に大きな
推力を発生させることができる。実用化されたロケットのほとんどは化学ロケットである。
なお、ロケットが推進する原理を「
噴射したガスがロケットの後方の空気を押すから」と考える人もいるが、これは誤解である。ロケットの推進は噴射したガスの
反作用によるもので、だからこそ真空中でも推進できる(かつて
ニューヨーク・タイムズが、この誤解に基づき真空中でロケットは飛べないと主張して、ロケット工学開拓者の一人である
ロバート・ゴダードを批判する記事を掲載したという逸話がある)。こうしたロケットの原理を示す式として、
ツィオルコフスキーの公式が存在している。
化学ロケットでは、その最大の
貨物は自らを宇宙空間まで運ぶ推進剤である。これは地球から長距離を航行しようとする際に大変な非効率をもたらすが、宇宙空間に中継地点を設けることである程度緩和されるのではないかと考えられている。
アポロ計画の月着陸船が月から帰還するときに必要としたロケットが、地球から打ち上げられた際の
サターンロケットに比べて驚くほど小さかったことからわかるように、重力が小さい場所から発進すればそれほど多くのエネルギーは必要としないのである。
衛星軌道上に基地(
宇宙ステーション)を設け、そこまで分割運搬した部品を組み立てて大きなロケットを建造し、そこから出発させるという方法などが考案されている。
新型のロケットを開発する場合、成否は
ロケットエンジンの開発にかかっていると言っても過言ではなく、計画遅延の原因はエンジン開発の難航が占める割合が大きい。
1960年代〜80年代にかけて、米国は
スペースシャトルのエンジン以外、新型の液体燃料ロケットエンジンの開発には消極的だった為、欧州等に比べて出遅れた。その為、1990年代からロシアが開発した液体燃料ロケットエンジンを導入して
ライセンス生産している。
化学ロケット
化学ロケットは
燃料と
酸化剤を搭載しており、これらを燃焼させて高温・高圧のガスにして噴射する。燃料と酸化剤をあわせて
推進剤という。この推進剤の形態から、ロケットは固体燃料ロケット、液体燃料ロケット、ハイブリッドロケットに大きく分類される。
固体燃料ロケットとは、常温で
固体の
燃料と
酸化剤(の混合物)を用いるロケットで、古くは
火薬、最近の例では
合成ゴムと酸化剤を混合成型したものなどが使われている。
固体燃料は常温では飛散しないため管理(保管)が楽、構造が簡単な割に安価で大推力が得られる、体積が(液体燃料に比べ)小さいなどの利点を持つ。
反面、重量あたりの推力を示す
比推力が悪いため効率が悪く、推力の制御が難しいこと、またいったん点火したら、燃料をすべて消費するまで燃焼を停止させるのはほとんど不可能であることなどの欠点を持つ。
こうした特性から、常に発射可能な状態で保管しておかなければならない軍事用途、大推力を求められる宇宙ロケットの一段目や補助
ブースターに広く使用されている。
液体燃料ロケットは、
液体の燃料と酸化剤を用いるロケットである。固体燃料ロケットとは違い、推力の制御が容易であること、いったん燃焼を停止させたものを再度点火するのが可能であることなどの長所を持つが、その反面、燃料を送り出すための高圧
ポンプや複雑な配管システムが必要とされるなど、構造が複雑になり、その分高価になるという欠点も持つ。
初期には常温保存が可能な
ヒドラジン(燃料)と
四酸化二窒素(酸化剤)、
ケロシン(燃料)と
液体酸素(酸化剤・極低温)、などが用いられたが、最近はより高い比推力が得られる
液体水素(燃料)と
液体酸素(酸化剤)の組み合わせが、各国の基幹ロケットの主流となっている(アメリカの
スペースシャトル、ヨーロッパの
アリアン5、日本の
H-IIAなど)。
このロケットの場合、酸素と水素を化合させる訳であるから、排気ガスは有毒物質を一切含まない
水蒸気である。言い換えれば、最も強力な
蒸気機関であるともいえる。
環境保護という観点から見ても望ましい組み合わせであるが、液体水素は極低温流体であるのに加え、分子サイズも小さい(漏洩しやすい)ため取り扱いには危険を伴い、ロケット自体の開発も困難を極める。
なお、一般に燃焼室の冷却には燃料自体が使用される。上記の液体酸素・液体水素の
エンジンでは、燃焼室の温度は三千度にも達するが、これだけの高温に耐えられる
素材は現在のところ存在しない。その対策として、燃焼室の壁の中には細いパイプが何百本も張りめぐらされており、極低温の液体水素をその中に通し、それを
気化させることによって熱を奪うというシステムになっている。
ハイブリッドロケット
は、化学ロケットの一種で、燃料と酸化剤がそれぞれ異なる相をもったロケットである。一般的には、固体の燃料と液体の酸化剤が用いられる。固体燃料ロケットの特徴である構造の簡易性と液体燃料ロケットの特徴である推力調整を可能とするが、同時に固体燃料ロケットと液体燃料ロケットの両方の欠点も併せ持つ。このため長らく実用化を見なかったが、
スペース・シップ・ワンではハイブリッド・ロケットエンジンが採用された。
このため現在宇宙ロケットの分野では、効率が良い液体燃料ロケットが主流であり、固体燃料ロケットは
ブースターなどの補助推力として用いられる。一方、定期的に打ち上げる高高度気象観測ロケットや、発射準備時間が短い
ミサイル等では固体燃料ロケットが主流である。
分類
以下に、燃料ではなく形態によるロケットの分類を示す。
これらの方式の効率を計算するときは全て
ツィオルコフスキーの公式に基づく。
単段式ロケット
最初期のロケットの姿であり、ペイロードを必要な速度・高度まで1基の打ち上げロケット(段)で運んでしまうロケットのこと。下記の多段式ロケットの対になる方式である。
単段式ロケットは、多段式ロケットに必要な切り離し装置などがないため構造が簡単で、製作技術や制御技術があまり高くなくても作れる。またロケットが小型であれば多段式にするより単段式ロケットの方が効率も良い。しかし大型ロケットの場合、時間が経って不必要になった空の燃料タンクやエンジンもずっと輸送することになり、効率が劣る。
V2ロケットなどの
短距離弾道ミサイルや気象観測用ロケット、模型ロケットなど小型のロケットであれば、多段式にすると機構の複雑さから重量が増えてかえって非効率的になってしまうため、単段式ロケットが使われることも多い。
多段式ロケット
ズヴェズダの打ち上げ(ロシア)]]
ロケットが十分な速度を得るためには、移動体本体の質量は全体に比してできるだけ小さいことが望ましい。このため、空になった推進剤タンクやそれを燃焼させるエンジンを収容する部分は必要ない質量として切り離すという仕組みが
コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーにより考案され、現在も使われている。これを多段ロケットという。特に、化学ロケットは技術的な制約により、多段式でなければ衛星軌道に達する(つまり、
第一宇宙速度を得る)ことは困難である。
この理屈で言うと、理論上は、非常に小さく区切られた燃料タンクと小型のロケットエンジンを、使い終わったら片っ端から切り離していくのが一番効率的になるのだが、実際には小型化にも限度があるし、あまり段数が多いと制御が難しくなり、切り離し装置の重量や容量も増えるため、技術面で現実的ではない。
現在主流のロケット(打ち上げ機)は、殆どが2〜3段式の構成である。
なお、例えばペイロードを持たない3段式ロケットの場合、1段目は1段目自身と2段目、3段目のロケットも運ぶ必要があり、2段目は2段目自身と3段目を、3段目は3段目自身のみ運べば良い。
無重力空間のみで動くロケットの場合、各々の段の比推力は目的に応じて自由に決められるために1段目や2段目が非力で3段目のみ強力なエンジンを積むといったことも問題なくできるが、地球など天体の引力圏内にあるロケットの場合は、下のロケットが非力(具体的に言うと、上に載っているペイロードおよび全てのロケットの重量と自分自身の重量の和未満)だと飛び上がることができない。
そのために、後述するクラスター方式などと併せ、下の段ほど強力にして、上の段に行くに従い出力も小さくなっていく。
クラスターロケット
エンジン1基あたりの出力は高いほど望ましいのだが、新しい大型のエンジンを開発するには燃焼室の振動、耐久性、エンジン自体の質量増加、エンジンを作るのに必要なコストなどの問題を解決するため、莫大な時間と費用がかかる。
クラスター方式は手持ちの信頼性の高いエンジンを流用して推力を増やせる堅実な方法であり、ソ連がアメリカに先んじて
スプートニクや
ボストークを打ち上げるのを可能とした。
しかしエンジンの数が増えると制御が困難になり、
N1ロケット(一段目は30基のエンジン)、
ソ連の有人月旅行計画の失敗へとつながった。
旧ソ連の
R-7(現在も直系の子孫である
ソユーズロケットが使われている)が代表的なもので、一段目は5基のエンジン(ノズルは20個)を持つ。
他のクラスターロケットには同じく旧ソ連製の
プロトン(一段目に6基)や
エネルギア、アメリカの
サターンIおよびIB(1段目に8基)などがある。
ロケットの歴史
ロケットの歴史は古く、西暦
1000年頃(?)には
中国で、今の
ロケット花火の形態が発明され武器として利用されていた。
1232年、対
モンゴル戦で使用されたという記録がある。その後、モンゴル人の手に渡り各地で実戦に投入された。
14世紀半ばには中国の焦玉により多段式ロケットが作られた。
初期のロケットは回転せず、
推力偏向が無い為、命中精度が低かった。初期のコングレーブのロケットでは長い棒をつけた。(現代のロケット花火に似ている)大型のコングレーブのロケットは重量14.5kg、棒の長さは4.5mだった。
徐々に改良が加えられたが、ライフリングや鋼鉄製砲身等の
大砲の改良により射程距離、精度が高まってくると、誘導装置の無いロケットの使用は信号弾等、限定的なものになっていった。後年、
カチューシャ (兵器)、
無反動砲、
MLRSとして復活する。
近代のロケット、すなわち宇宙に行けるロケットが研究・開発されたのは、
19世紀後半から
20世紀である。
この頃のロケットは、アメリカの
レッドストーンやソビエトの
R-7のように弾道ミサイルから弾頭を外し、代わりに人工衛星や宇宙船を取り付けたものであり、ロケットの打ち上げ技術はミサイル技術と等価であり、
威嚇も含めた軍事的価値も高いために、抜きつ抜かれつの開発競争であった。
また、
GPS衛星の打ち上げ後は比較的正確な位置測定の手段として
カーナビゲーションシステムなどに応用され、宇宙ロケット関連技術は現代人の生活を支えるのに欠かせない存在となっている。
ロケットは文化的な影響も大きな存在である。子供でも理解しやすく見栄えの良いロケットは人々へ夢を与え、あるいは正義や悪の力を象徴する強烈なシンボルとしてジャンルを問わず
映画や
小説、
アニメや
漫画等の舞台に多く登場してきた。その人気の背景となる日本のロケット技術発展は目覚しいもので、現在では世界的にも高いレベルを持っている。近年では資金難や技術的な困難を乗り越え、ロケットで打ち上げられた
はやぶさ探査機が目的の
小惑星に着陸し、世界で初めて小惑星からの離陸を果たす(着陸だけならば
米探査機が先)という偉業を成功させた事が記憶に新しい。はやぶさ探査機は当初
マスメディアから全くといってよい程取り扱われる事が無かったが、次第に関係者だけでなく多くの一般市民がプロジェクトの経過を見守り、関心を集めることになった。
国家ないし国家連合による政策としての宇宙開発が財政面で苦しい局面に立たされている反面、民間によるロケット開発も盛んである。これまでにも
TBSの宇宙特派員として
1990年12月2日に
ソユーズで飛び立ち
ミールに9日間滞在した
秋山豊寛をはじめ、何人かの民間人が主にロシアに経費を支払い宇宙開発目的のロケット打ち上げに便乗する形で、
宇宙旅行を実現したことはあった。いくつかの民間企業は将来的に民間
旅客機での
宇宙旅行を実現するべく、現在主に母機から空中で切り離し加速し、宇宙空間(地上100キロメートル)に到達後数十秒から数分後に水平着陸するタイプのロケットプレーンを開発している。日本では
ペプシが
1998年にこの宇宙旅行の切符を公開懸賞としてプレゼントするキャンペーンを行ったことがあるが、
2001年に(
2001年宇宙の旅へのオマージュとして)実施予定だったフライトは、現在の所延期されている。
さらに規模は小さくなるが、アマチュアによるロケット打ち上げの試みも存在する。
2004年5月17日には20人ほどのアメリカ人による組織「Civilian Space eXploration Team」(CSXT)によって打ち上げられたアマチュアロケット「GoFast」が、高度100キロメートルに到達し、史上初めて宇宙空間に到達した、一般人によるロケットとして歴史に名を残した。
世界各国のロケット打ち上げ実績
教材用ロケット
また、最近(1990年代ごろから?)では、
ペットボトルに水と圧縮空気を充填し、水を圧縮空気の圧力で噴射する事によって推力を得る
ペットボトルロケットが、科学教材として広く利用されている。また、
火薬を使って飛ばす「
モデルロケット」も普及し始め、各地の中学校で「総合教育」として取り入れられている。この「モデルロケット」は
アメリカ航空宇宙局(NASA)も普及に協力している。また、
JETEXや
タイガーロケッティのような模型飛行機向けのロケットエンジンもあった。(JETEXは現在も継続中)
ハイブリッドロケット開発
大気圏内でのロケット
ロケットは推進力が強力であり、
大気圏内において物体を飛行させるための推進力としても利用される。その最も一般的な適用例は気象観測ロケットで、高層大気の状態を観測するためにしばしば打ち上げられる。
気象庁でも定期的に気象観測ロケット(
MT-135)を打ち上げていたが、
2001年 に運用を終了させた。
他に無重力実験や各種実験、
天体観測の為に試験装置を搭載したロケットが打ち上げられる場合もある。
飛行機への適用としては、
第2次世界大戦末期に盛んな研究・開発がなされたが、その典型例がナチスドイツの
迎撃戦闘機Me163といえる。Me163 は推力1,700kgの
ヴァルターロケット1基により亜音速飛行を実現した。この戦闘機を参考に日本でも類似した局地戦闘機「
秋水」が試作されたが、試験飛行中に墜落して終わった。
また、固体燃料式のロケットも
プロペラ機の離陸促進用補助ロケットとして各国で多数利用されたが、純然たる推進力として採用した
航空機として有名なのが第2次世界大戦において使用された日本海軍の人間爆弾(
特攻兵器)「
桜花」である。本機はまずグライダーとして母機から切り離された後、攻撃を回避しながら敵艦へ体当たりするため推力800kgの火薬式ロケット3本を順次燃焼させながら最終的に時速800km程度で突入するというものであった。航空機から小型航空機を発射するという概念はその後、超音速実験機
X-1や
ALCMに引き継がれている。
ドイツでは無線誘導ロケット爆弾
Hs 293などが開発され、実戦投入された。
その後、米軍の
超音速実験機
X-1においてロケットが推進力として使用されて飛行速度1.06マッハを実現したものの、燃費が悪いロケットは大気圏内の航空機用推進力としてはあまり用いられなくなり、航空機の推進力は次第に
ジェットエンジンへと遷移していった。
しかし、その後も宇宙ロケットと構造が類似している
弾道ミサイルには液体燃料ロケットが採用され、瞬発力と大推力を有する固体燃料ロケットは弾道ミサイルのほか、前述の通り短射程のミサイルや気象観測、無重力実験、
射出座席やZero length launch、
MLRS、
無反動砲等にも多用されている。
主なロケット
歴史的なロケット
現代のロケット
関連項目
}}
外部リンク
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ろけつと