『ダニエル書』においてミカエルは天使長たちの一人として
ペルシアの天使たちと戦うためにつかわされている。ミカエルという名前を直訳すれば「神に似たるものは誰か」という意味になるが『
タルムード』によれば「誰が神のようになれようか」という意味だとされる。
ミカエルの姿は旧約聖書の
外典である『
エノク書』を通じてキリスト教徒へと伝えられた。
カトリック教会などではミカエルは、大天使ミカエルあるいは聖ミカエルという名で知られる。
正教会では神使ミハイルと呼ぶ。
図像的には甲冑を纏って天の軍団の先頭を行く、といったイメージが一般化され、場合によっては
孔雀の尾羽のような文様の翼を有した姿で描かれることが多い。
ユダヤ教におけるミカエル
旧約聖書の中でミカエルの名前が出るのは『ダニエル書』のみである。その中で断食後のダニエルの見た幻の中でミカエルがイスラエルの守り手として現れる。旧約聖書にミカエルの名前があらわれるのはこの箇所だけである。聖書学者たちの中には『
ヨシュア記』の中にすでにミカエルの姿の原型があらわれていると考えるものもある。
旧約聖書そのものにはミカエルへの言及がほとんどないにもかかわらず、ラビ伝承によってミカエルはさらに多くの役割を与えられることになった。『ダニエル書』に描かれるイスラエルの守護者というイメージから、ミカエルと堕天使
サマエルとの争いという伝承が生まれた。サマエルは時として
サタンと同一視されることもあり、もともと天使であったが天国から追放されて堕天使となったとされる。サマエルが天国から突き落とされたとき、ミカエルの羽を押さえ込んで道づれにしようとしたが、ミカエルは神自身によって救い上げられたという。また、
ロトを壊滅する
ソドムから逃げ出させたのも、
イサクがいけにえにされるのをとめたのも、
モーセを教え諭して導びいたのも、イスラエルに侵攻する
センナケリブの軍勢を打ち破ったのもミカエルであるとされている。旧約聖書
外典『モーセの昇天』に描かれたミカエルとサマエルの死闘は、のちに竜(悪魔の象徴)と争うミカエルというイメージを生み出した。
ラビたちによって天使へのゆきすぎた信心が規制されるようになっても、ミカエルのみは「イスラエルの守り手」として特別な地位を保たれた。ユダヤ教ではミカエルへの祈りが盛んにつくられている。ほかにも天上の
エルサレムへユダヤ教徒の魂を迎え入れるのも、終わりのときにラッパを吹き鳴らすのもミカエルであるとされている。中世以降、
カバラ思想が発達していくと、イスラエルの守りミカエルは、そのまま「ユダヤ人の守り手」となった。
キリスト教とミカエル
ミカエルは旧約聖書外典である『エノク書』にもあらわれる。『エノク書』は初期キリスト教徒たちの間で広く読まれ、新約聖書の『
ユダの手紙』や『
ヨハネの黙示録』にもミカエルへの言及がみられる。黙示録ではミカエルが天使を率いて赤い竜(サタン)と戦う場面が描写されている。新約聖書外典である『モーセの黙示録』ではモーセが
シナイ山で
十戒を受けたとき、十戒を記した石板をモーセに渡したのはミカエルであるとされている。
その後、ミカエルは人ではないが聖人の一人としてキリスト教徒の間で広く崇敬されるようになった。キリスト教徒たちはミカエルをラファエル、ガブリエルとならぶ三人の大天使の一人であるとみなした。ミカエルは守護者というイメージからしばしば山頂や建物の頂上にその像がおかれた。ルネサンス期に入ると、ミカエルはしばしば燃える剣を手にした姿で描かれるようになった。中世においてミカエルは兵士の守り手、キリスト教軍の保護者であった。現代のカトリックでは、兵士ではなく警官や救急隊員の
守護聖人になっており、地域では
ドイツおよび
ウクライナの守護聖人とされている。
カトリック教会における日本の守護聖人もかつてはミカエルであるとされた。これは
フランシスコ・ザビエルによって定められたが、のちにフランシスコ・ザビエル自身が日本の守護聖人とされている。
カトリック教会ではミカエルはラファエル、ガブリエルと共に
9月29日が祝い日になっており、かつてイギリスの大学ではこの日が始業日であった。カトリック教会ではミカエルにささげられた教会や修道院が492年に作られたカシノ山の聖堂(イタリア)をはじめ多数つくられたが、もっとも有名なものとしてフランスの
モン・サン・ミッシェルがあげられる。
イスラム教とミカエル
その他
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3世紀のラビ・シメオン・ベン・ラキシュは、ミカエルという名前や天使の思想はユダヤ人が新バビロニア王国に捕囚されていた時代にバビロニアの宗教の影響によって取り込まれたものだという説を唱えた。この説は現代の学者たちによっても広く受け入れられている。
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エホバの証人においてはミカエルとイエスは同一人物であるとされている。
- オカルティストはミカエルに、赤色・南・炎といった属性を付与しているが、キリスト教とは関係がない。
関連項目
みかえる