国名
ドイツ語での正式名称は、
Bundesrepublik Deutschland (ブンデスレプブリーク・ドイチュラント)。通称は、
Deutschland。略称は、
BRD(ベーエルデー)。
Bundesは「連邦」の意、
Republikは「共和国」の意である。
Deutschの原義は「民衆、大衆」という意味で、
フランク王国時代に
ラテン語系の言語ではなく、
ゲルマン語系の語を用いる
ゲルマン人系一般大衆をこう呼んだことに由来する。
公式の英語表記は
Federal Republic of Germany。通称は
Germany。略称は
FRG。Germanyは民族名の「ゲルマン」から来ている。
日本語表記は
ドイツ連邦共和国。通称は
ドイツ。
独逸、
獨乙などと表記され、
独(獨)と略される。中国語では
徳意志、
徳国であり、日本にも独の字を忌避して徳国と表記する人がいる。「ドイツ」は原語(ドイチュラント)、若しくは
オランダ語の「Duits」が起源だといわれている。
フランスやスペイン、ポルトガルではそれぞれアルマーニュ(Allemagne)、アレマニア(Alemania)、アレマーニャ(Alemanha)と呼ばれるが、これはゲルマン人の一派であるアレマン人に由来する。
地理
ドイツの地形は北から南へ、大きく5つの地域に分けられる。北ドイツ低地、中部山岳地帯、南西ドイツ中部山岳階段状地域、南ドイツアルプス前縁地帯、バイエルン・アルプスである。
北ドイツ低地は全体的に標高100m以下の平坦な地域で、
エルベ川などの川沿いにはリューネブルクハイデと呼ばれる大きな丘陵地がある。バルト海沿岸は平坦な砂浜や、断崖をなす岩石海岸となっている。中部山岳地帯は、おおよそ北は
ハノーファーの辺りから南は
マイン川におよぶ地域で、ドイツの西部と中部に広がり、ドイツを南北に分けている。地形的に峡谷や低い山々、盆地など変化にとんでおり、山地としては西部のアイフェル丘陵とフンスリュック山地、中央部の
ハルツ山地、東部のエルツ山脈がある。南西ドイツ中部山岳階段状地域には
オーデンヴァルトや、ドイツ語で「黒い森」を意味する
シュヴァルツヴァルトの標高1000mを超える広大な森林がある。アルプスはドイツ国内ではもっとも標高が高い地域で、南部の丘陵や大きな湖の多いシュヴァーベン=バイルン高原に加えて、広大な堆石平野とウンターバイエルン丘陵地、そしてドナウ低地を包括している。ここにはアルプスの山々に囲まれた絵のように美しい数々の湖や観光地があり、
オーストリアとの国境地帯にはドイツの最高峰
ツークシュピッツェがそびえ立つ。
ドイツにおける火山活動は
先カンブリア代に収束している。先カンブリア代末から始まったカレドニア変動や、後期古生代におこったバリスカン(ヘルシニアン)変動はいずれも主要活動帯がドイツを横切っているものの、地表には痕跡が残っていない。バリスカン変動は2000kmにおよぶ規模の大陸間の変動であった。現在のドイツの地形を決定したのは新生代における褶曲運動である。
アルプス変動帯の活動により、最南部は標高1200mにいたるまで隆起した。ドイツにおけるアルプス変動帯は東アルプスと呼ばれている。同時に西部フランス国境に近いライン川に相当する位置に、ライン地溝を形成する。ライン地溝は、約500kmに渡って南北に伸びる。
ドイツ北部(
北ヨーロッパ平野)の地表は氷河地形の典型例である。最終氷期においては北緯51度線に至るまで氷河が発達し、ヨーロッパを横切る数千km規模の末端堆石堤を残した。その100から200kmの海岸線方面には
モレーンが残る。末端堆石堤とモレーンの北側にそっていずれも氷食性の
レスが堆積し、農業に適した肥沃な土壌が広がる。いっぽう、モレーンの南側は土地が痩せている。ドイツに残る長大な河川はいずれも最終氷期の河川に由来するが、ポーランドの
ヴィスワ川、ポーランド国境に伸びる
オーデル川、
エルベ川、ドイツ西部の
ヴェーザー川が互いに連結し、網目状の流路を形成するなど、現在とは異なる水系が広がっていた。
歴史
現在のドイツを含む西ヨーロッパ地域に人類が居住を始めたのは
石器などが発見された地層から約70万年前と考えられている。60万年から55万年前の地層ではハイデルベルク原人の化石が、4万年前の地層では
ネアンデルタール人の化石が確認されている。
新人は約35000年前から現れ、紀元前4000年頃の巨石文明を経て紀元前1800年頃までに青銅器文明に移行している。紀元前1000年頃にはケルト系民族によって
ドナウ川流域に
ハルシュタット文明と呼ばれる鉄器文明が栄えた。
東フランク王国の国王
オットー1世は962年
アウグストゥス(古代
ローマ帝国皇帝の称号)を得て、いわゆる
神聖ローマ帝国と呼ばれるゆるやかな連合体を形成した。しかし
中世におけるドイツには国家としての統一や民族意識はほとんどなく、各地に
領邦国家が分立した歴史は現在に続く連邦主義の基盤となっている。各領邦は近隣諸国に比べて弱体で、また
宗教改革では新旧両教に分かれて互いに争ったため
三十年戦争ではドイツのほとんど全土が徹底的に破壊された。1600万人いたドイツの人口が戦火によって600万人に減少したと言われる。それまで国名にドイツが冠されていなかったが、15世紀からは「ドイツ国民の神聖ローマ帝国(Heiliges Römisches Reich Deutscher Nation」と称し、対ドイツ搾取的な教皇サイドからの自立の姿勢を示した。
1667年に
ザミュエル・フォン・プーフェンドルフ()が著した書ドイツ帝国憲法について(Über die Verfassung des deutschen Reiches)において初めて、
ドイツ帝国という呼称が確定できる。
ドイツは現在ではヨーロッパで最大の国家のひとつとなっているが、長期間の分裂を原因とする東西の経済格差がそれまでの順調な成長を妨げている。一方で、歴史的に統一されたドイツが周辺諸国に対して脅威となってきた問題を懸念する見方もあったが、反対に米ソによってドイツが冷戦後の強国の一つになることを容認されたとの分析もある。実際、統一ドイツは
フランスと共に
欧州連合の中核国として発言力を増し続けている。
政治
行政府の長である
連邦首相は、任期4年で、大統領の提案を受け連邦議会で選出され、下院の信任を必要とする
議院内閣制を採用する。内閣の閣僚は、首相の指名に基づき、大統領が任命する。
地方行政区分
}}
主要都市
ドイツは地方分権の歴史が長いため、
ロンドンや
パリ、
東京の様な首都への一極集中はしていない。人口は2006年のデータを使用。
外交
日本との関係
工学においては、
大久保利通の命を受けた井上省三がザガン市のカール・ウルブリヒト工場で紡績の
生産技術を学び、日本に伝えている。その知識は現代の日本の
製造業の礎となった。軍事においても陸軍は普仏戦争後、軍制をフランスからプロイセンへと変え、その制度と理論による近代化に努め、
日露戦争の勝利に繋がった。
また、文化面では、第一次世界大戦期においてすら、捕虜収容所において人道的に扱われたドイツ軍捕虜を通じてゴム製品や洋菓子などの生産のノウハウが日本に導入されたり、クラシック音楽・ドイツ体操などが捕虜収容所周辺地域に伝授されるなどの文化交流があったことも重要といえる。
1999年1月から
2000年9月までは「ドイツにおける日本年」と定められて日本が総合的に紹介され、また
2005年と
2006年には「日本におけるドイツ年」の諸企画が行われ、新しい形の日独交流が形成されている。
経済
を擁するドイツは、世界有数の輸出国である。]]
対米ドル為替レートによる単純換算値では、ドイツは
アメリカ合衆国、
日本に次ぐ世界第3位の
GDPを誇る経済大国であり、
EU加盟国第一の経済力を持つ。
旧西ドイツは日本同様、
第二次世界大戦後に急速な経済発展を成し遂げたが、
1990年の東西統一以降旧
東ドイツへの援助コストの増大、社会保障のためのコスト増大などが重荷となって経済が低迷。また旧東ドイツでは市場経済に適応できなかった旧国営企業の倒産などで失業が増え、旧東側では失業率が17.2%に達し、深刻な問題となっていた。また企業が人件費の安い
ポーランドや
チェコなどへ生産拠点を移転させようとしているために、ますます失業が増えるのではないかとの懸念もある。しかしこの数年はGDPは増加傾向であり、失業率も減少して2008年の時点では1992年以来の低水準となっている
交通
-
航空
- 欧州でも屈指の大手航空会社ルフトハンザドイツ航空が世界各国に航空路線を持っている。また、フランクフルト国際空港は欧州でも有数のハブ空港である、また、エア・ベルリンなどの格安航空会社もある。
-
鉄道
-
ドイツ鉄道が全国に路線を張り巡らせ、超高速列車ICEや都市間を結ぶインターシティ、ヨーロッパ各国との間の国際列車が多数運行されている。また、都市部では近郊電車のSバーンや地下鉄(Uバーン)、路面電車の路線網が発達している。なおヴッパータールには、現在運行している世界最古のモノレールがある。
-
道路
- 自動車大国であるだけに道路網も発達しており、アウトバーンと呼ばれる高速道路が主要都市を結んでいる。
軍事
ドイツ連邦軍と国境警備隊が国防をになっているほか、相互防衛条約に基づき6万強の米軍が駐留している。ドイツは
欧州連合及び
NATOの主要構成国であり、ロシアなど東方諸国を主たる仮想敵国としてきた。時代の移り変わりとともに、政府は連邦軍の主任務を、従来の国土防衛から「国際紛争への対処」に移行させる方針を発表。内容としては、
2010年までに紛争地においてNATO即応部隊などに参加する「介入軍」、平和維持活動にあたる「安定化軍」、両軍の後方支援を担当する「支援軍」の3つに再編成するものである。
また、ドイツでは現在も
徴兵制度が有り、健康な満18歳以上の男子には9カ月の兵役義務が課せられている(長男、次男は強制的義務だが、三男からは兵役か奉仕活動か選択することができる)。しかし、基本法によって所定の手続きを経れば
良心的兵役拒否が認められ、兵役義務を回避できる。その場合は10〜12カ月間代替役務として老人介護や障害者支援などの社会奉仕活動に従事することが義務づけられる。兵役拒否者は年々増加しており、近年その数は全体の4割近くにのぼっている。
軍当局は徴兵制を廃止したいと考えており、何度か徴兵制の廃止を政府に提案している。しかし、徴兵制を廃止すると、それまでボランティアとして慈善活動に従事させられた兵役拒否者がいなくなってしまう。それは、つまりは安い費用で賄えた福祉関係者がいなくなってしまうのと同義であり、老人介護などの福祉に多大な経済的負担が発生する懸念から、未だに徴兵制の廃止が実現できていない。
国民
ゲルマン系の
ドイツ語を母語とする
ドイツ人が多数を占め、他に
バウツェンにはスラヴ系の
ソルブ人が、
シュレースヴィヒにはゲルマン系のデンマーク人などがおり、帰化
ポーランド人も多数居住している。ドイツ人は欧州諸民族の例にもれず実態は混成民族であるが、主流であるゲルマン系と言語が一致しているため、ゲルマン民族として記述されることが多い。また国籍は有していないが、
トルコ人と
クルド人も移民者とその子孫として存在している。経済情勢の悪化などから、
ネオナチなどによる外国人襲撃など
人種差別が深刻な問題となっている。
言語
言語の一覧
現在、
エスノローグはドイツ連邦共和国内に以下の言語の存在を認めている。
宗教
教育
教育課程は初等教育4年、中等教育以降は職業人向けと高等教育向けの学校とに厳格に分けられている。いわゆる「
マイスター制」である。12歳までは基礎学校(義務教育)で、子どもの能力の見極めが重要になる。13歳から15歳では、就職のための専門的な職業教育が行われる。大学への進学を希望する場合は、
ギムナジウムという進学校に進学し、大学進学に必要な
アビトゥア資格の取得を目指す。日本においては、俗に「ドイツでは工業職人がマイスターと呼ばれ、尊敬を受けている」という話がまことしやかに語られているが、正確ではない。第二次世界大戦後の高度成長の過程においては確かに事実であったが、近年では多く子どもたちがギムナジウムに進学する傾向が見られ、これがドイツの財政(教育費)を圧迫する原因にもなっている。また、工業職人のイメージが強いマイスター制度だが、これも近年ではコンピュータ技術者といった従来のイメージとは異なる職種の学校が増えつつある。近年、国際化によりマイスター制度が先進工業の発展に寄与しなくなったことや、12歳で人生が決まってしまう学校制度に疑問が上がり、近年は義務教育から
アビトゥア資格取得までの義務教育から中等教育を一貫したシュタイナー学校や
総合学校が広まっている。
大学においても近年変革の時期を迎えている。ドイツの大学はほぼ全てが州立大学で、基本的に学費は納める必要がない(ただし、州により学費徴収を行うケースもある)。しかし、近年の不況の影響を受け、大学は授業料を徴収するかどうか、検討を始めている。また、かつてのドイツは大学卒業した者はエリートコースを歩み、大学卒業資格は社会で相当に高い評価を得ていたと言える。しかし、近年における財政界からは、もっと柔軟な思考ができる学生が欲しいとの声が強まり、大学のカリキュラムも変革の時期を迎えている。
文化
文学
哲学
音楽
テクノや
トランスなどのクラブ系音楽では、野外
レイヴ『
ラブパレード』や屋内レイヴ『
MAYDAY』が開催されるなど、ドイツ国内に広く普及している。テクノでは
ベルリンの
トレゾアや
ケルンの
コンパクトなど優良なレーベルも多く、世界中から数多くのアーティストが曲をリリースしている。トランスの分野では、
東ベルリン出身のDJ“Paul van Dyk”が「DJ Magazine」誌の人気投票で1位を獲得しているほか、EU(欧州委員会)よりヨーロピアン・ボーダーブレーカーズ賞を受賞した“Cascada”をはじめ、“Baracuda”“Groove Coverage”など国内外で活躍するドイツ人アーティストも多い。
美術
スポーツ
サッカー
ウィンタースポーツ
モータースポーツ
世界遺産
ドイツ国内には、
ユネスコの
世界遺産リストに登録された文化遺産が30件、自然遺産が1件ある。さらにポーランド、イギリスにまたがって2件の文化遺産が登録されている。詳細は、
ドイツの世界遺産を参照。
その他
- 映画の分野については、敗戦後の米国の占領政策の影響もあり、隣国フランスや米国ほど盛んとは言い難い。しかしながら、2003年に公開されたグッバイ、レーニン!は、ドイツ統一をテーマにすえた作品としてベルリン国際映画祭で最優秀ヨーロッパ映画賞を受賞し、注目を集めた。
-
ビールが主たるアルコール飲料である(ただし、フランクフルトなど地方によってはリンゴのワインの方が人気)。ミュンヘンのオクトーバー・フェストは世界最大のビール祭りだといわれる。
-
ソーセージ (Wurst) ・ハム (Schinken) ・チーズ (Käse) などの冷製食品・カルトエッセン(Kaltessen; 火を通さない食事)などに地域ごとの特色がある。
-
民族衣装などの伝統文化保全には強い関心が集まっている。
-
ワインは白ワインが主体。かつてはリースリング種をつかった甘口のワインが多かったが、食生活の変化に伴い辛口の白ワインや赤ワインが生産・消費ともに増加している。→ドイツ料理も参照。
- かつてはすべての州で、「閉店法」により、(駅構内の売店を除く)小売店は平日(月曜〜土曜)は20時から翌朝6時まで、日曜・祝日は終日営業できないといった規則が定められていたが、2006年のFIFAワールドカップ開催をきっかけとして営業時間が延長された。同時に各州に閉店法に関する詳細を定める権限も移り、一部州では閉店法自体が撤廃されるところも出てきている。大型のショッピングセンターやトルコ・イタリア・ギリシャ・中国など外国人が経営する店は深夜や土日も開店している場合も多い。
- カルト団体対策
宗教的多様性と国家干渉主義の両方の伝統を持つ中央ヨーロッパ。とりわけ旧東ドイツの各州においてゼクト(カルト)団体が増加しているドイツでは、予防啓発とゼクト脱退者保護の政策が、地方レベルで実施されている。ゼクト担当委員のポストが各州に創設された。中央レベルでは、教会法人格の取得に関する認証基準が定められた。情報交換を目的とした作業会議が、州職員と州代表者の間で何度も開かれた。とはいえ市民社会には秩序があり、国家宗教は揺らいでいないため、この問題への関心は限定的である。現在のところ、禁止されたゼクトはない。その上、国家権力の行動の幅は狭くなっている。(WikiSource2004年度Miviludes報告書日本語訳より抜粋、一部変更。)
祝祭日
関連項目
脚注
外部リンク
- 政府
- 日本政府
- 観光
- その他
*