コンピュータ (computer) は、広義には
計算機、狭義には計算開始後は人手を介さずに計算終了まで動作する計算機。純理論的には、
チューリングマシンと等価なものを指す。日常的には
パーソナルコンピュータ(パソコン)を指して「コンピュータ」と呼ぶことも多い。
なお、日本の法律上での呼称は「
電子計算機」(でんしけいさんき、略称:
電算機、
電算)とされている。「
電子頭脳」(でんしずのう、略称:
電脳)という通称でも呼ばれる(人間の
頭脳の
アナロジーとして、また
ロボットの頭脳として捉えられる事による)。
また日本では昭和30年代のコンピュータの生産が行われた時代から「電子計算組織」とも呼ばれ昭和40年代前半頃まで使われた呼称であった。また
21世紀を迎えても
官公庁の
公式文書である
入札公告、
条例などではこのように書かれることがある。
ハードウェアの構造から
デジタルコンピュータと
アナログコンピュータに大別されるが、現在使われているほとんどのコンピュータはデジタルコンピュータであり、単にコンピュータという場合はこちらを指すことが多い。
デジタルコンピュータは、おもに
半導体素子を用いて作られた
論理回路の組み合わせによって構成される。演算の対象は通常
二進法によって表され、桁数を増やしていけば原理的にいくらでも計算精度を上げられるが、ほとんどの演算では、桁数が多くなれば必要な計算が増えて遅くなる。
対して
アナログコンピュータは、加減算や微積分などを行うアナログ電子回路を
演算増幅器によって構成し、それらを組み合わせて所望の演算を行う。演算の対象は電圧によって表され、演算結果は
オシロスコープやペンレコーダなどに出力される。入力の変化に対してほぼリアルタイムで出力が得られる特徴があり、各種
シミュレーションなどに利用されたが、演算内容を変更するためには回路を変更する必要があり、得られる精度にも限界があるので、デジタルコンピュータの高速化に伴ってその役割を終えた。
語源
computer という語は元々は算術
計算を行う人を指す言葉だった。この用法は(
アメリカや
イギリスでは非常に稀になりつつあるが)今でも有効である。
オックスフォード英語辞典第2版 (OED2) では、この語が機械的な計算装置を指す言葉として使われた最初の年を
1897年と記している。
1946年までには、異なるタイプの計算機を区別するために、OED2によって
computerに付く修飾語句がいくつか導入されている。これらの修飾語の中には
analogue、
digital、
electronicといった語が含まれている。しかし様々な引用文から、1946年以前にこれらの語が既に使われていたことは明らかである。
computer の定義や訳、その他の詳細な語源はWiktionaryのComputerの項目を参照のこと。
コンピュータの仕組み
1940年代に最初の実用デジタルコンピュータが登場して以来、コンピュータに使われる技術は劇的に変化してきたが、すべてのコンピュータはチューリングマシンの原理で動作している。チューリングマシンはあらゆる計算可能な数を計算することのできるプログラミング機械である。電子計算機の「計算」とはALU機能のことではなく、あらゆる計算という意味である。
チューリングマシンは非常に素直に動作する。チューリングマシンは命令とデータをメモリから取り出す (fetch)。取り出した命令を実行し、内部状態を変更し、結果をメモリに格納し、次の命令を取り出す。「停止」の命令に遭遇するまでこの手順が繰り返される。チューリングマシンでは命令とデータを区別せず、単なる入力記号列としている。
実際のコンピュータはチューリングマシンの入力記号列のうちプログラムとなる命令列と、データとなる書き換え可能な入出力列を区別している。また計算結果を利用するため、I/O機構が追加されている。I/O機構はプログラムの入れ替えにも使われる。実際のコンピュータはチューリングマシンと異なり、メモリをランダムアクセスすることで実行効率を向上している。しかし、究極的な計算能力(あらゆる計算可能な数を計算することができる)は変わらない。
コンピュータは次の4つの主要な部分からなるとされる。すなわち、
算術論理ユニット (Arithmetic and Logic Unit,
ALU)、
制御回路、
記憶装置(メモリ)、
入出力装置(まとめて
I/O と呼ぶ)である。これらの部分は
バスと呼ばれる導線の束で相互に接続され、通常はタイマまたは
クロックによって動作する(別のイベントが制御回路を動作させる場合もある)。
命令(バス)
コンピュータの
命令は人間の言語に比べるとずっと貧弱である。コンピュータは限られた数の明確で単純な命令しか持っていないが、曖昧さは全くない。多くのコンピュータで使われている命令の典型的な例としては、「5番地のメモリの中身をコピーしてそのコピーを10番地に書け」とか「7番地の中身を13番地の中身に加算して結果を20番地に書け」とか「999番地の中身が0なら次の命令は30番地にある」といったものである。
コンピュータの内部では命令は二進コード、つまり2を底とする計数法で表現される。例えば、
インテル系の
マイクロプロセッサで使われるあるコピー命令のコードは10110000である。ある特定のコンピュータがサポートする特定の
命令セットをそのコンピュータの
機械語(machine language)と呼ぶ。
実際には、人間がコンピュータへの命令を機械語で直接書くことは通常はなく、高水準の
プログラミング言語を使う。プログラミング言語で書かれた命令が、
インタプリタや
コンパイラと呼ばれる特別なコンピュータプログラムによって自動的に機械語に翻訳されて実行される。プログラミング言語の中には
アセンブリ言語(
低水準言語)のように、機械語に非常に近いレベルで対応付けられるものもある。逆に
Prolog のような
高水準言語は計算機の実際の演算の詳細とは完全に切り分けるという絶対原理に基づいている。
ハード
記憶装置(メモリ)
メモリは番地を付けられたセルの列で、各々のセルには小さな量の情報が格納される。この情報はある場合にはコンピュータに何をすべきかを教える命令である。また、セルにはコンピュータが命令を実行する対象となるデータも格納される。全てのセルはこのどちらかを格納し、ある時はデータを、またある時は命令を格納する。
一般的には、メモリセルの中身はいつでも書き換えられる。すなわち石板というよりは落書き帳に近い。
演算処理(プロセッサ)
算術論理演算ユニット (ALU) は算術演算(加算・減算など)のような基本的な演算やAND、OR、NOTといった
論理演算、比較演算(2つのバイトの中身が等しいかどうかの比較など)、シフト演算などを行う装置である。コンピュータの中で真の仕事(情報処理)を行う部分と言える。
制御
制御ユニットはメモリの中でどのバイトがコンピュータが現在実行中の命令を格納しているかを追いかけ、どの命令を実行すべきかをALUに教え、実行に必要な情報をメモリから受け取り、実行結果を適切なメモリ位置に運ぶといった仕事をする。一度これらの仕事を終えると、制御ユニットは次の命令に飛ぶ。(次の命令は普通、次のメモリ番地に位置しているが、命令がジャンプ命令の場合には別の場所にある。)
メモリを参照する際に、現在の命令はメモリ内で関連する番地を指定するために様々なアドレッシングモードを使う場合がある。コンピュータの
マザーボードの中には2つまたはそれ以上のプロセッサをサポートするものもある。コンピュータ
サーバでは2つまたは複数のプロセッサを使うのが一般的である。
入出力
入出力(Input/Outputを略してI/Oとも言う)はコンピュータが外の世界から情報を得たり、計算結果を外に送り返したりすることを可能にするためのものである。外部から見て、コンピュータに情報を送ることを入力、逆にコンピュータから情報を得ることを出力という。
入出力装置は、主として入力を得るためのもの(キーボード、スキャナなど)、出力するためのもの(モニタ、プリンタなど)、入力と出力を兼ね備えたもの(磁気ディスク装置、インタフェースなど)に大別することができる。
アーキテクチャ
現代のコンピュータではALUと制御ユニットを
中央処理装置 (
CPU ;central processing unit) と呼ばれる一つの集積回路にまとめている。典型的には、コンピュータのメモリは数個の小さな集積回路の形で CPU の近くに配置する。コンピュータの質量の圧倒的大部分を占めているのは電源装置のような付属システムかあるいは入出力装置である。
大型のコンピュータでは、上記のようなモデルとは違って複数のCPUと制御ユニットが同時に動いているものもある。さらに、主に研究用途や科学計算に使われるコンピュータでは上に書いたモデルとは大きく異なっている。しかしこういったタイプのコンピュータはプログラミングの方式が標準化されていないため、商用目的の機種にはほとんど見られない。
ソフト
プログラム
コンピュータプログラムは単にコンピュータに実行させる命令の大きなリストである。場合によってはデータの表が付属することもある。現在でも1行〜数1000行程度のプログラムが用いられているが、
ワープロソフトや
OSなどのコンピュータプログラムは数百万行の命令からなる。これらの命令の多くは繰り返し実行される。2003年時点での典型的なパーソナルコンピュータは1秒間に20〜30億個の命令を実行できる。コンピュータのこのような並外れた能力は、複雑な命令を実行できる能力に由来するものではない。むしろ、コンピュータは
プログラマと呼ばれる人々によって組まれた何百万もの単純な命令を実行しているのである。プログラムごとに全てを新規に書き下すことは効率が悪いため、画面に点を描くといったよく使われる仕事を行う命令のセット(
ライブラリ)が多数用意されている。
今日では、ほとんどのコンピュータは同時にいくつものプログラムを実行するように見える。これは通常、
マルチタスクと呼ばれている。実際には、
CPUはあるプログラムの命令を実行した後、短い時間の後でもう一つのプログラムに切り替えてその命令を実行している。この短い時間の区切りをタイムスライスと呼ぶ。これによって、複数のプログラムが
CPU時間を共有して同時に実行されるように見える。これは動画が実は静止画のフレームの短い連続で作られているのと似ている。このタイムシェアリングは通常、オペレーティングシステムというプログラムで制御されている。
オペレーティングシステム
具体的に処理すべき作業の有無によらず、コンピュータに自らの演算資源を管理し「ユーザーの指示を待つ」という動作を取らせるためにさえ、ある種のプログラムを必要とする。典型的なコンピュータでは、このプログラムは
オペレーティングシステム (
Operating System = OS) と呼ばれている。オペレーティングシステムをはじめとする、コンピュータを動作させるのに必要となるソフトウェアを全般に、「基本ソフト(
基本ソフトウェア)」「
システムソフトウェア」と呼ぶ。
コンピュータを動作するためオペレーティングシステムは、ユーザー、もしくは他のプログラムからの要求に応じて
プログラム(この意味では、
アプリケーションソフトウェアもしくは単に
アプリケーションという用語も使用される。
ソフトウェアという用語も似た意味合いだが、これはプログラム一般を指すより広い概念である)をメモリー上にロードし、プログラムからの要求に応じていつ、どの
リソース(メモリやI/O)をそのプログラムに割り当てるかを決定する。
オペレーティングシステムはハードウェアを抽象化した層を提供し、他のプログラムがハードウェアにアクセスできるようにする。例えば
デバイスドライバと呼ばれるコードがその例である。これによってプログラマは、コンピュータに接続された全ての電子装置について、その奥深い詳細を知る必要なくそれらの機械を使うプログラムを書くことができる。また、
ライブラリと呼ばれる再利用可能な多くのプログラム群を備え、プログラマは自ら全てのプログラムを書くことなく、自らのプログラムに様々な機能を組み込むことができる。
世間に普及するコンピュータを台数を基準として見た場合、そのほとんどはデスクトップコンピュータとして存在しておらず、携帯電話や炊飯器などの電気製品、各種の測定機器、乗用車や工作機械などの装置に組み込まれた、非常に小さく安価なコンピュータとして実装されている。これらを
組み込みシステムと呼ぶ。一般に
組み込みOS (embedded OS) と呼ばれる専用のOSを用いる。TRONプロジェクトの
ITRON、米WindRiver社の
VxWorks、米Symbian社の
Symbian OS、米LinuxWorks社の
LynxOSなどが利用されている。ただし、近年は開発期間の短縮などの目的で、WindowsやLinuxといったデスクトップコンピュータで使われているOSと同系統のOSを搭載する場合もある。また、小規模な組み込みシステムのなかには、明確なOSを内蔵していないものも多い。
コンピュータの歴史
コンピュータの種類
携帯機器
研究段階のコンピュータ
関連項目
- 総合索引に関する項目
-
ソフトウェアに関する項目
-
ハードウェアに関する項目
- 研究に関する項目
- 社会・諸問題に関する項目
- ネットワークに関する項目
脚注
外部リンク
*
*こんひゆた