アドホック(
ad hoc)は、「特定の目的のための」「限定目的の」などといった意味の
ラテン語の語句である。
ad hocのadは「〜へ」「〜について」、hocはhaecから派生しており「これ」「この」という意味(hoc < hic < haec)で、英語では「for this」に相当することになる。
ヨーロッパ諸語では様々な語句と組み合わせて用いられている。
ad hoc mode アドホック・モード
ad hoc querying アドホック・クエリ
情報科学分野の用語。アドホック・クエリを使えば、カスタマイズされた
クエリを簡単に作成することが可能になる。通常、データベースの原理やSQL文を深く理解していなくても、
GUIを使って行うことができる環境が提供されている。ただし、このような方式のクエリが多用されるとデータベースシステム全体のパフォーマンスにも影響が出かねないため、直接に"生"のデータベースを対象とするのではなく、"生"のデータベースを定期的に複製したものを対象にクエリを作成する、というようなことも行われる。そのような複製は「
データウェアハウス」などと呼ばれることもある。
ad hoc committee アドホック・コミティー
アドホック・コミティーとは、特定の目的のために設置され問題が解決した後には解消される委員会のことである。このような委員会は、組織の通常のプロセスでは解決しきれないような問題を解決するために利用される。例えば
GATTは、開始された段階ではアドホック・コミティーによって管理されたが後にその委員会は解散し、管理は
世界貿易機関(WTO)に移されることになった。
adhocracy アドホクラシー
アドホクラシーは「ad hoc + cracy> adhocracy」という構造の造語。
アルビン・トフラーによって1970年代に広められた概念。現在では組織管理論や
経営学の分野では広く用いられている概念である。burocracy(官僚制、官僚的システム)の硬直的で非効率な組織と対比される。
ヘンリー・ミンツバーグは、アドホクラシーは通常の官僚的制度的な指揮系統を断ち切ることで機会を機敏に捉え、問題を解決し、結果を出す、としている。また、官僚制(burocracy)は旧時代のもので、アドホクラシーのほうが未来のもの、ともされる。
ad hoc hypothesis アドホックな仮説
アドホックな仮説(Ad hoc hypothesis)とは、ある
理論が
反証されたときに、その反証を否定するためにその理論に後から付け加えられる補助仮説のことである。
反証主義の立場からすれば、
反証可能性を減少させるようなアドホックな仮説は認められない。すなわち、アドホックな仮説は、しばしば当の仮説の反証可能性を奪い、結果的に仮説そのものの科学的な地位を消し去ってしまう、と見なされている。
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理論分析などにおいて、特定の結論を導くために用いられる仮定については、アドホックな仮定(Ad hoc assumption)と呼ばれる。これに関しては科学的に有益である限り問題ない。
代表的な事例
この種の仮説の代表的な事例として、
燃焼に関する「
フロギストン仮説」についてのものが挙げられる。一般に、ものを燃焼させれば煙が立ち上ることから、なにものかが燃焼中に放出されているのではないか、と見なしたのがフロギストン仮説である。この仮説に従えば、燃焼後の物体は質量が減少しているはずである。
フロギストン仮説そのものは、立派に科学的な法則になりうる。しかし、後に
ラボアジエによって精密な燃焼実験が行われ、燃焼すれば質量はむしろ増加する(現代科学の仮説では、燃焼とは
酸化のことであり、当然ながら酸素が加われば質量も大きくなる)ことが分かった。
フロギストン仮説は否定されようとしたが、一部の科学者は仮説を偽であると認めず、新たな補足を加えた。この補足がアドホックな仮説と呼ばれる。それは、「フロギストンはマイナスの質量を持つから、フロギストンが燃焼中に出て行けば逆に質量は増加する」というものだった。
このアドホックな仮説は、マイナスの質量を検出することが不可能であるため(燃焼の前後の質量を比較する、という方法が提案されたが、それはマイナスの質量を持つことを必ずしも裏付けない)、反証可能性を持たない。反証可能性を持たなければ、一連の仮説の全体が崩れてくる。結局のところ、このアドホックな仮説は、科学的に有意義なはずのフロギストン仮説を空疎な議論に貶めてしまった。
関連項目
脚注
あとほつく