アイドル (
Idol) は、崇拝の対象(偶像、イコンなど)を指し示す
英語。語源は「見る」を意味する
ギリシア語の
ιδειν(イデイン)で、
ειδoς(エイドス、姿)、
idola(
イドラ、
ラテン語、偶像)→
idol(
英語、
偶像)と転じていった。
若者に人気がある若手
芸能人(
歌手、
俳優、
タレント)なども指し、デビュー当初から「アイドル」を自称する芸能人が存在するなど、日本において独自の発展を遂げている。
アイドルという言葉
しかし日本においては、ほとんど外国人に対してのみ使われる言葉であり、人気若手芸能人は一般的に「スター」、映画時代に一世を風靡した
吉永小百合、
浜田光夫らは特に「青春スター」と呼ばれていたが、
高度経済成長を達成して生活様式が西洋化・都市化した
1970年頃から日本人に対しても違和感無く使われるようになった。
このアイドルという言葉は、未成熟な可愛らしさに愛着を示す日本的美意識を取り入れながら独自の世界を創り上げ、
1970年代半ば頃に一般に定着、
1980年代には市民権を得た。
現在アイドルという言葉は、あるコミュニティにおいて人気のある者を指す言葉として用いられる場合がある。名詞的に「学校のアイドル」、「職場のアイドル」などと呼ばれるもの、また同様の形容詞的表現として「アイドル的人気のある人」、「○○ではアイドル並み」といった範囲限定使用がそれである。
概要
現在(1990年代半ば以降)では、女性アイドルの分類が細分化されており、アイドル歌手だけではなく、映画やドラマなどで女優活動に重点を置く「アイドル女優」、アニメ声優などの声優活動に重点を置く「
アイドル声優」、男性誌グラビアで水着姿などを披露する活動が中心の「
グラビアアイドル」、CM活動で人気を得る「CMアイドル」、バラエティ番組への出演を活動のメインとする「
バラエティアイドル」などジャンルも多様化し、これらを総合的に「アイドル」と呼ぶのが一般的である。アイドル歌手以外のアイドルをアイドルとみなさない考えであっても、伝統的な清純性をセールスポイントとしているグラビアアイドルはアイドルと呼ばれる。
女性アイドルの多様化
女性アイドルは、時代ごと及びジャンルごとに分類されることが多い。
1980年代中頃までは、アイドルは手の届かない遠い存在、庶民の憧れ的な存在であったが、
フジテレビの「
夕やけニャンニャン」から飛び出したアイドル集団「
おニャン子クラブ」は、親しみやすさを前面に打ち出し、従来のアイドル像を覆した。
また、それまでのアイドルと言えば、歌手、俳優、グラビアなど多岐に渡るジャンルで活動した者が多く、
薬師丸ひろ子や
菊池桃子など、事務所の方針等で水着にならないアイドルは若干いたが、歌手デビューしないアイドルは極めて稀であった。レコードが売れない者はトップアイドルとして認識されない風潮があった。
しかし、
山瀬まみ、
井森美幸、
森口博子など、歌手としてのセールスが芳しくなかったアイドル達が、テレビのバラエティ番組に活路を見出し、活躍するようになった。バラエティアイドルを略した「
バラドル」という呼称が普及したのも、この頃である(ただし、森口博子は1990年代に入ってヒット曲に恵まれ、歌手としても成功した)。
1990年代に入ると、
かとうれいこ、
細川ふみえなどが、恵まれたプロポーションを武器にグラビアアイドルとして活躍した。1970年代に
アグネス・ラムが同様の活躍をしたことはあったが、大勢のグラビアアイドルが活躍するようになったのは彼女たちの功績が大きい。
また、従来はアイドルとは見なされなかった
女子アナや、若い女性
声優、「特撮ヒロイン」(「
平成仮面ライダーシリーズ」、「
スーパー戦隊シリーズ」、「
ウルトラマンシリーズ」など特撮ヒーローもののヒロイン(正義側・敵側は問わない)役の女優・グラビアアイドル)が支持を集めたほか、15歳以下のアイドルを指すチャイドル(U-15アイドル、
ジュニアアイドル)、ヌードグラビア専門の
ヌードル、若手演歌歌手の
演ドルなどの新たな造語が生まれた。また
内田有紀、
広末涼子、
深田恭子などの女優業をメインとするアイドル女優が活躍する。こうしてアイドルの細分化が進み、歌手としての成功は、アイドルとしての成功に必要不可欠ではなくなった(ただし、内田有紀や広末涼子は歌手としても成功した)。
更にサブカルチャーの充実趣向の細分化にあわせ様様な分野のアイドルが生まれるようになり鉄ドル、ロボドル等と名乗るアイドル、
浅尾美和、
上村愛子、
オグシオ(
小椋久美子、
潮田玲子)など
スポーツにおけるアイドルも出現し話題を集めている(知名度の低い種目においてはアイドルを作って話題を集める事も行なわれている)。
女性アイドルの歴史
アイドル以前
1970年代のアイドル
1980年代のアイドル
1980年代は女性アイドルの黄金時代であった。正統派の
松田聖子を筆頭に、それに続く
中森明菜から邪道とされる
おニャン子クラブまでさまざまなタイプの女性アイドル(グループ)が現れた。女性アイドルのプロデュース手法などは、この時代に確立されたものである。
80年代アイドル全盛期の中でも、アイドルの当たり年は一般に、1980年、1982年、1985年と言われている。
80年代前半のアイドルの特徴は、デビュー時にキャッチフレーズが付けられていたことである。
- 松田聖子…抱きしめたいミスソニー
- 中森明菜…ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)
-
山瀬まみ…国民のおもちゃ、新発売(なお、National Pastime―「国民のおもちゃ」というバンドもアメリカに実在した) など
また、80年代前半の一時期は、歌詞に自分の年齢を入れることも流行した。
- 松田聖子…エイティーン
- 中森明菜…少女A
- 松本伊代…センチメンタル・ジャーニー
- 小泉今日子…私の16才 など
しかし、1980年代終盤に入るとロックやニューミュージックバンドが台頭するようになり、工藤静香や
Wink、
森高千里を最後にアイドル歌手は凋落し始めていく。それと並行して、お笑い芸人顔負けの個性を表に出したバラエティアイドル(バラドル)が登場した。代表に
松本明子、
井森美幸、
森口博子、山瀬まみ。
また、素人集団を売りとした
おニャン子クラブが業界を席巻した
1985年以降は、従来の神秘的イメージを売りにしたアイドルは普通っぽさを売りにした身近なアイドルにとってかわられて行く。
1990年代のアイドル
従来の「歌手」から、
テレビCMや雑誌の
グラビアなど、ビジュアルを主体とした「モデル」型、豊満なバスト(巨乳)を売りとした「グラビアアイドル」が新たなアイドル像を形成した。「モデル」型では「3M」(
宮沢りえ・
観月ありさ・
牧瀬里穂)がテレビCMで人気を博し、「グラビアアイドル」では
かとうれいこ、
細川ふみえ、
山田まりやなどが雑誌グラビアを足がかりに、テレビCMやバラエティ番組へと進出していくようになった。後半からは
かつてアイドル歌手、アイドル女優を多数生み出してきた大手事務所もグラビア市場に参入しグラビアアイドルが市民権を得る。
1988年頃から1993年頃にかけては、テレビの歌番組の衰退とともに、それまでの歌手活動を中心とする女性アイドルは「アイドル冬の時代(または「アイドル氷河期」)」に入る。またこの時代以降若手女性タレントが自らをアイドルと名乗ることが一部を除きタブー化していった。
1990年代中盤は
小室哲哉プロデュースによる歌手たち(小室ファミリー)や
安室奈美恵、
SPEEDら
沖縄アクターズスクール勢がヒットを連発した。また、それまでのアイドル歌手とは異なり、キャラクターの作りこみの少なさを兼ね備えることで人気を得た。しかし、曲のパターンが単一化していく中で次第に飽きられ、R&Bや
ヒップホップが主体となると凋落し始めた。
1990年代後半になるとテレビ東京の番組『
ASAYAN』のオーディションにおいてデビューが決まった
鈴木あみや
モーニング娘。が台頭し、そのモーニング娘。を中心とした
つんくプロデュースの歌手集団
ハロー!プロジェクト勢やアイドル女優出身の
浜崎あゆみが人気を得た。また、この辺りになると歌唱力があり、ダンスも完璧に踊れる完成されたアイドルが主流になり、従来のアイドル像からハードルが一気に上がったのもこの時代である。
このような背景から、女性アイドルのイメージに、実力より人気先行・子供向け等のマイナス面があるとして女性アイドルと呼ばれるのを嫌う歌手、タレントも増えた。そのためかある時点でアイドル卒業を宣言したりする女性アイドルさえいる。
2000年代のアイドル
歌手という正統派のアイドルの系譜は、この頃になるともはやアイドルとしてではなくアーティストという在り方で登場する。ただし旧来型のアイドルとは異なり、歌唱力、作詞力、同性の支持が必須条件として求められるようになった。それと同時にアイドルの概念は細分化、周辺化し、
グラビアアイドルや
女性タレント等がアイドルシーンの中心となって活躍。アイドル輩出の土壌は多様化している。また1980年代と異なりアイドルという言葉が負の要素で使われる事が非常に多くなり
平山あやの項目にあるとおり従来アイドルに位置すると思われるタレント自らがアイドル呼ばわりを固辞する等という現象も随所に見られるようになった。よって現在では「アイドル」という確固たる立場で活躍するよりは、さまざまなシーンにおいて活動を行いなおかつアイドル性も併せ持つという場合の方が多い。
また、それに伴いアイドルの短命化が進んでおり大ヒットすることが少なくなり、大量生産大量消費状態となっている。かつてのアイドル仕掛け人である
ホリプロ創業者の
堀威夫が嘗て読売新聞のインタビュー記事で「昔は即席めんが受ける時代だからズブの素人がスターになることが受け入れられた。現在は高い金を出して並んででもうまい物を求める時代だからそうはいかない。今の時代
スター誕生のような番組をやっても時代に合わない。」と話し、同じく仕掛け人の一人である
相澤秀禎も自著の中で「女性アイドルといえど今は同性の支持なくして売れず、同性の支持の方が重要だ。」と述べる等最早女性アイドルという概念そのものが変貌を求められる時代になったと言える。
男性アイドルの概要
男性アイドルは1970年代以降ほぼ
ジャニーズ事務所の一人勝ちと言って良い。特に1980年代
少年隊、
シブがき隊、
光GENJIなどが人気を博し、特に1990年代初めに登場した
SMAP、
TOKIOが、歌手というよりバラエティタレントとして人気を得たこと、(男性アイドルということもあるが)メンバーが30代になってもアイドル的な人気を獲得していることも、アイドル像を大きく変化させたと言える。最近では
嵐のメンバーのうち
櫻井翔は報道キャスター(月曜日限定)としての面を見せ、
二宮和也に至ってはハリウッドデビューを果たしている。その後、ジャニーズ以外の男性アイドル
DA PUMP、w-indsなどを始め多数の事務所からデビューしている。両者が現れる直前に登場し、“ジャニーズ系を超えるか”と見られたのが
高橋良明である。
一般的に、女性アイドルがかわいらしさやあどけなさをセールスポイントにするのに対して、男性アイドルは格好良さ、爽やかさ、スポーティさなどをセールスポイントにする(
王子も参照)。どちらも性的な魅力を前面に出さない(清純さを強調する)点で共通しており、
アイドルの恋愛沙汰はそれ自体スキャンダルとして取り上げられることが多かった。女性アイドルでは、主たるファン層である若い男性の需要に応えるためにいわゆる「健康的なお色気」(水着グラビア等)程度は提供されることもあるが、男性アイドルについては女性アイドルと比較しても性的な面が隠される傾向があり、中性的な顔立ちや体つきの
少年がアイドルとして売り出されることが多い。
1970年代に入り、徐々にアイドルという言葉が使われ出した頃に登場したのが
新御三家(
郷ひろみ・
西城秀樹・
野口五郎)で、3人とも主に歌手として活動を行った。さらに、ザ・タイガースの事実上の解散後、ソロあるいはバンドとして活動を続けた沢田研二も
ザ・ベストテンなどの歌番組の常連として人気を保った。70年代には他にも
フォーリーブス(
ジャニーズ事務所所属の男性アイドルの先駆)、
フィンガー5(兄妹5人組。人気絶頂期にはメインボーカルの
晃(四男)にアイドル的人気が集まった、男女混合アイドルグループと解すこともできる)などの男性アイドルグループが輩出した。この時代の男性アイドルのイメージとしてよく使われたのが「白馬に乗った王子様」であり、手の届かない別世界の存在として記号化されることが多かった。
1990年代以降、男性アイドルのイメージが、それまでの「王子様」としての存在からより身近な存在へと変わっていった。その中で、デビュー当初から
コントなどの
お笑いに近い仕事もこなしてきた
SMAPが人気グループに成長し、彼らを擁するジャニーズ事務所の男性アイドル界の王者としての座は揺るぎないものとなっている。そのためもあってか、女性アイドルで起きているようなアイドルの細分化(「
癒し系アイドル」など)は、いまだ男性アイドルでは顕著となっていない。また、ジャニーズ所属以外の男性アイドルが
ゴールデンタイムの
歌番組にほとんど出られないという謎の現象も起こっている。
国民的アイドルの概要
1980年代末には「国民的アイドル」という呼称(概念)も登場した。「国民的アイドル」という言葉は、「国民的美少女」(
後藤久美子のキャッチコピー)及び「
全日本国民的美少女コンテスト」(国民的美少女コンテスト)から派生したものと思われる。同コンテストは、歌手というより女優(あるいはモデル)を発掘するという意味合いが強いと見られ、アイドル=歌手という図式の崩壊・変容に一役買った面がある。近年国民的アイドルと呼ばれたのはSMAP、SPEED、モーニング娘。、松浦亜弥、上戸彩などである。
その条件として、まず一部の者や限定的な趣向者のみにしか知られていないアイドルではなく、年齢層も子供から高齢者まで幅広く認知がなければならない。さらに、人気が長い間高いこと。
芸能界では一般的に
視聴率が取れる人物(グループ)を指す。また、高視聴率のメイン番組を持っていることなどが挙げられる。
アイドルのファン
アイドルのレコード(CD)などを熱心に購入するだけではなく、コンサートやイベントに参加する者も多い。芸能プロダクションなどが運営するファンクラブに所属する者も多い。
ファンがアイドルに向けた熱意が高じた結果、芸能プロダクションなどの公式ファンクラブとは別に、1970年代半ばにはファン側が主体の全国規模のファン組織が登場する。
キャンディーズのファン組織「全国キャンディーズ連盟(全キャン連)」が、その初めての例と言われる。これが俗に言う「
アイドル親衛隊」の始まりであり、後に親衛隊連合、親衛隊同盟という二大勢力に発展していく。また「
追っかけ」や「
カメラ小僧」という行為(ファン像)も生まれてきた。
ファンの多くは、内心は熱狂的だが、表面的には密やかな態度であると見る向きもある。その一方、アイドルへの思いが高じたあげく、アイドルを傷つける行為に走る例も見られる。古くは
美空ひばりや
こまどり姉妹がファンから硫酸をかけられた事件が挙げられる。1980年代にも、
松田聖子がコンサート中にステージ上でファンに殴られた事件、
倉沢淳美がサイン会でファンから腕を切りつけられた事件などが発生している。
しかしながら1990年代以後芸能界においてアイドルという言葉が極めて負の意味で
用いられるのに合わせるかのように価値観の変化や娯楽の多様化などから若年層のアイドル離れが急激に進み少子化による若年層そのものの減少し、これらの層の中には『
萌えブーム』へつながる2次元の美少女キャラクター(漫画・アニメのヒロインなど)のファンへと移行してゆく者が出現したこともあいまってアイドルイベントに足を運ぶ若者が急激に減少し今日では経済力に勝る中年層にむしろ的を絞る商法を行う場合も出て来ている。
雑誌の表紙
参考文献
-
稲増龍夫 「アイドル工学」 (ちくま文庫、1993年)
出典・脚注
*