野底（ヌスク）マーベー｜沖縄都市伝説情報

マーペーとカニムイ

むかし、八重山の石垣島と西表島の間にある黒島という小さな島に、
マーペーという美しい娘と、カニムイというたくましい若者がいた。
二人は小さいころからの仲良し。
家も中道と呼ばれる道をはさんで向かいにあるものだから、
朝から晩まで一緒になって遊んだりして過ごしていたって。
村の人も、マーペーとカニムイの仲の良さを知っていて、
「いつになったら結婚するのかなぁ」と言っていたんだって。
そんなある日、島に大勢の役人がやって来て、村の人みんなにこう言った。
「王様の命令として米や砂糖をもっと多く納めるように。
それには今の土地では足りないので新しく土地を開くことになった。
ついては、この島から石垣島へ人を移す。村の中道からこちらへ住んでいる者は全員、
石垣島へ行くことを申しつける」

別れ

シーンとなった村人だけど、そのうちに、
「大変なことだ。絶対に行かんぞ」と、叫ぶ声が多くなった。
「えーい黙れ。文句を言う奴は今すぐ切ってやるぞ！」
刀を持ってみんなの前に立つ役人に、だれも声を出す者はいない。
そこへ出てきたのがカニムイ。
「私と結婚すると約束したマーペーがいます。
その娘だけは連れて行かないで下さい。お願いです」
でも役人は言うことを聞いてはくれない。
しかたなくあきらめ、マーペーとカニムイは互いに見つめ合ったまま、
黙って別れるしかなかった。
中道をへだてていただけで離ればなれになったマーペーとカニムイ。
石垣島へ連れて行かれたマーペー達は野底という村で、朝から晩まで働いた。
こうして、広い海とけわしい野底岳にはさまれた村にも、
少しずつ作物が実るようになった。

マーペーの想い

ある夏のこと村をマラリアという恐ろしい病気が襲ってきた。
苦しむ人のために村では、お祭りをしてマラリアをふりはらい、
村を明るくしようとしたわけ。
でも、マーペーもマラリアにかかり倒れてしまった。
苦しみながら、マーペーが想うのはカニムイの事ばかり。
祭りの日、どうしてもカニムイの住む黒島が見たくて、
一人で野底岳に登っていった。
やっとの思いで頂上にたどり着いたマーペーが見たものは、
石垣島で一番高いおもと岳だった。
どんなに目をこらしてみても、カニムイの住む黒島は見えない。
とうとう精魂つき果てたマーペーは、
悲しみのあまり、そのまま石になってしまった。
今でも野底岳の頂上には、石になったマーペーが、
愛しいカニムイが住む、黒島の方を見て座っているわけ。