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生前の「太郎像」に迫る 世界に広がった沖縄救済運動 米国で聞き取り

文化・芸能 2018-03-20 05:39:00

生前の「太郎像」に迫る 世界に広がった沖縄救済運動 米国で聞き取り
 【福田恵子通信員】終戦直後、海外のウチナーンチュに呼び掛け、戦争で壊滅した沖縄に物資を送ったハワイ生まれの2世・故比嘉太郎さんの活動を紹介した本「海からぶたがやってきた!」の作者・下嶋哲朗さんが2月、米国を訪れた。下嶋さんは7月、ロサンゼルス在住の沖縄民間大使、上原民子さんの提案で、同市郊外のガーデナで太郎さんの功績を若い世代に伝える講演会を開催する。

 太郎さんの長男アルビン・比嘉さんをカリフォルニア州サンタマリアに訪ねた下嶋さんにアルビンさん同席の下、話を聞いた。

 下嶋さんによると当時、ハワイのウチナーンチュたちは豚を飼い、それを使ったレストランビジネスで大きな成功を収めていた。ところが太郎さんが1945年に沖縄を訪ねた時には、豚の島である沖縄から豚が消えていた。沖縄の人々の生活を支援するため、太郎さんは最初、食料品や衣料、靴を送り、やがて生産につながる作物の種や釣り針を送るようになった。

 その活動はハワイに始まり、ニューヨークやロサンゼルスの沖縄系コミュニティーへ、さらには中南米へと広がっていった。また、キリスト教の教会も関与し人種、国、宗教の境界を超えた大きな活動となった。

 このような70年以上前の実話を現代の若者に語り継ぐことで、下嶋さんは「分断と対立の世の中を見直すきっかけになるのではないか」と考える。「世界各地の対立だけでなく、日本も今はひどい状況だ。太郎さんの沖縄の救済運動は、光を放つメッセージになり得るのではないだろうか。壁を乗り越えて沖縄のために一つになった史実を、今こそ、人々に訴えたい」 そのために、太郎さんがどのような人物だったのかをさらに知る必要性を感じ、アルビンさんを訪ねたという。「アルビンさんによると、太郎さんは人とは違う考えを持った人物で、ただ考えるだけでなく実行することが重要だといつも話していた。それは周囲をうかがう傾向がある日本人の団体主義とは一線を画すもの。アルビンさんは父親を非常にリスペクトしていると話してくれた」と語る。

 下嶋さんは日本の平和教育にも触れ、「日本人は平和授業を義務として子どもたちに課している。しかし、今や形骸化してしまい、自分が平和のために何ができるかという問い掛けや実行の部分が欠けている」とし、実行に移すことの重要性を強調した。

 下嶋さんは太郎さんの娘たちにも話を聞くため、ハワイも訪問。日本に戻り、アルビンさんの家で集めた膨大な資料を整理し、生前の太郎像に迫る作業に取り組むという。

 アルビンさんによるとガーデナでの講演会後、ハワイでも開催の計画が持ち上がっているという。
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